だが産業界の期待は大きい。Accentureは先に、2030年には企業のIoT利用「Industrial Internet of Things(IIoT)」の市場規模が14兆3000万ドルになるとの予想を発表した。併せて、IIoTに投資することでGDPが増加するという予想も出した。ドイツの場合、IIoTを実現する技術などへの投資を行うことで2030年のGDP予測より1.7%上回り、日本でも1.8%上回ると予想している。
同社のインメモリソリューション担当グローバルマネージングディレクター、プラットフォームソリューショングループの最高技術責任者(CTO)を務めるAlexander Zeier氏は、関心の高さを実感しているという。
「顧客からの関心は高く、自分たちの計画への支援を求める声をいただいている」とZeier氏。コントロールを強め、「予防保守(Predictive Maintenance)を実現するようなサービス」などに関心が寄せられている。
だが、まずは接続の部分を整備していく必要がある。そこで同社はHuaweiと協業し、さまざまな機器からデータを取得できる環境構築を進めている。データを取得した後で必要となるICTプラットフォームとの統合については、統合プロセスで標準化などの課題があると述べ、SiemensのWegener氏に同意した。
ドイツを本拠地としIndustrie 4.0の推進役を担っている欧州最大のソフトウェア企業であるSAPのインダストリー&アプリケーションイノベーション担当シニアバイスプレジデント、Christoph Behrendt氏は、Industrie 4.0をスタートするためのアドバイスとして、「自社の事業がどこに向かっているのかを理解すること、顧客、提携企業などにどのようなメリットを提供できるのかを理解すること、それを踏まえてサービスや製品を設計し、ビジネスモデルを組み立てること」とアドバイスした。
企業の中には計画すらないところも多いといい、「小さく初めて成功体験を共有することが大切だ」と述べた。
このほかにも、IoTの課題として、労働者とそれにかかわるセキュリティ問題などが上がった。
AccentureのZeier氏は、IoT利用のメリットの1つとして、VolkswagenがIoTを利用してコスト改善を実現した例を紹介した。
製造工場でロボットを導入することで、時間あたりの労働者コストは5ユーロに、これは人間の労働者の40ユーロの8分の1となる。人によっては喜べない話に聞こえるが、北欧の通信事業者Tele2 Groupでマシン間通信担当コマーシャルディレクターを務めるRami Avidan氏は、「企業に選択肢はない。20年後も存続していたいのなら、変化が必要だ。労働者も同じだ。新しい雇用も生まれるだろう」とし、労働者も時代に合わせてスキルを変えていく必要があると示唆した。
セキュリティはどうか。サイバー攻撃が日常的に見出しを飾っている。自動化された工場、配信チャネルなどをどのようにして安全に維持するか――。
地元のコンサル企業Fraunhofer ESKのビジネス事業部マネージャー、Mike Heidrich氏は「これまでと違うアプローチが必要」と述べる。これまではそれぞれのシステムが分かれており、その中でセキュリティ対策を講じていたが、全体を安全にするためのアプローチが必要という。「技術、組織、規制の3つの面がそろう必要がある」とHeidrich氏。
Huawei Technologiesが欧州にもつ研究施設European Research Instituteでバイスプレジデントを務めるWalter Weigel氏はこれに付け加えて、「マシンを管理しているのはわれわれ人間だ。スイッチをオフできるのだ。また、マシンに合わせたスキルが人間側にも必要だ」と述べた。