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攻めのITに必要なのはエンジニアの解放--ウルシステムズ漆原社長 - (page 4)

吉澤亨史 山田竜司 (編集部)

2015-10-15 18:21

 もし「売り上げを半減させてもいいから、利益を倍にしろ」という大手企業の経営者がいたら、われわれのビジネスにとって(同じような発想なので)非常に脅威になると思います。でも、日本の経営者はそんなことは絶対に言わない。SIerを否定する気持ちはまったくありませんが、トップラインを伸ばすことができるかもしれない攻めのITの方が面白い仕事ができると考えています。

――「攻めのIT」を実現するためには、何から着手すればいいか。

 売り上げが上がるモデルや、ビジネスモデルが変わるシーンは、いくらでもあります。それは、ネットサービスだけでなく業務系でも同様です。たとえば、時間で窓口が閉まるサービスは不便だと思いませんか。銀行や地方自治体、病院などは、いつも通りに仕事をしていたら営業時間に行くことすら難しい。日本の株式取引所には昼休みがある場合がありますが、これはグローバルで見たら異質ではないでしょうか。

 このような体制が変わらないというのは嘘だと思っています。10年後には24時間いつでもなんでもできるのが当たり前になる――。ITには明らかに、そのような世界をつくる力があります。

 たとえば、ヨドバシカメラではネットで注文すると当日に届きますよね。でも、目指しているのはそこではない。お店に来てもらって、説明を聞いて周辺機器も見て、注文して帰宅すると2時間くらいで届く。そのような世界を作りたいと経営者から聞きました。そういうトップがどんどん増えていると感じています。

 経営者が変わったら同時に発注力を高める必要があります。発注者は現在、自分たちの経営戦略を人に訊いています。コンサルティング会社に優秀な人材はたくさんいますが、(多くの分野でコモディティ化が進み)戦略を変えるだけで大きな価値を生めるような世界ではなくなったと思います。

 だから、IT屋でもコンサルティングできることが当たり前の世界になっていかなければなりません。その方が(ITの提案ができるぶん)価値が高いわけです。例えば、みんな英語で話すから英語で話せるようにする。これでは価値が生まれません。自動翻訳を作って英語の勉強が不要になる世界の方が価値を生めるとおもいます。

 もっと日本のSEを解放できる環境が必要です。IT部門にいる、スキルを持ったエンジニアが「どこよりも速い受発注システムを作って、売り上げを倍増する」と宣言して実行する――「攻めのIT」に対する提案が普通の話になれば、状況は変わると思います。

 また、評価のメトリクスも変えなければなりません。(SIの営業やコンサルが)顧客の満足度が絶対と言われながら、売り上げも重要と言われたら、フォーカスがずれます。そのため、ウルシステムズでは付加価値目標で評価しています。一人ひとりのバリューが高い、つまり単価も高くなくてはいけない、リピート率も高くなるという想定でこのような目標にしました。この評価の意図は「案件を選べ」ということです。だから利益率が高く保っています。

――5年後の展望は。

 顧客のビジネスにもっと踏み込んだ面白い仕事をしていると思います。顧客と一緒に事業に取り組み、例えばひとつのビジネスをスピンアウトさせて、ジョイントしていく。

 ビジネスには基本的に物流と商流と情報流しかありません。情報流だけでできることはあまりなくて、リアルな世界でのお金と物。ここがものすごく変わってくると思います。日本の物流システムは、きめ細かいサプライチェーンを作っています。これを生かせば、生鮮食品の当日デリバリーなども実現できると思います。

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