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攻めのITに必要なのはエンジニアの解放--ウルシステムズ漆原社長 - (page 3)

吉澤亨史 山田竜司 (編集部)

2015-10-15 18:21

 また、証券会社の金融デリバティブも7年来手掛けています。金融商品は数万銘柄あって、しかも毎日増えています。そうすると、ディスクに書き込む暇はなく、メモリ上で処理を完結する必要がある一方、データを失うわけにはいきません。高速なインメモリデータベースでないと処理できないのです。ここでわれわれは自社でデータグリッドフレームワーク「ULFIRE」というトランザクションが消えないアーキテクチャを開発しました。これも優秀なSEがいてこその製品です。

――攻めのITに優秀なエンジニアが必要だということはわかったが、実際にIT部門だけでそのような人材を養成するのは困難だ。 まず、実務の多くを担っているシステムインテグレーター(SIer)の中で高いスキルを持つエンジニアを育てるにはどうすればいいのか。

 発注者側の論理がわかり、開発できるような環境に人を置くことと、いいチームを作ってその中で高度なトレーニングをすること。要するに、チームとしてファンクションを提供できればいいので、一人で全部こなす必要はありません。さまざまなスキルを持つエンジニアがいるひとつのチームが、最初から終わりまで対応できればいいわけです。

 これまでは、トップダウンの会社であれば、経営陣に対して戦略コンサルが行きました。その後、業務コンサルが入って業務の「To Be図」を書きます。「あとはITがやれ」ということでITが入って、なんとか製品を導入する。これではいいものはできません。なぜなら、人がスイッチングしているからです。そうではなく、コンサル、業務分析と設計、アーキテクトの3人が一緒になって一気通貫にプロジェクトを進めることが非常に重要です。

 そのためウルシステムズでは、システム開発の経験がないという人はいません。そういう人材にコンサルティングのスキルセットを覚えさせる方が効率的だと考えています。逆に、コンサルティングに要素技術を覚えろといっても、それは難しい。SEは3カ月もあればコンサルティングスキルを身につけられると認識しています。発注側はお互いにリスペクトできる濃い人材でチームを作ればいいわけです。

 われわれはグローバルサプライチェーンの仕事もやっていますが、米国に納品すると、「バグがない」とか「納期通りだ」と驚かれます。日本では当たり前のことなのに、彼らにとっては「奇跡的」なんですね。そういうエンジニアリングスキルは日本の方がずっと高い。日本のSEの未来は明るいと思います。

――問題は(SIerの)経営サイドであると。

 はい、問題は経営サイドです。一方、そのような経営者の下でSEが我慢する時代は終わりかけていると思います。これからはSEが「こんな仕事はしない」とストライキを起こせばいいんですよ。「俺たちがやりたいのはこっち(攻めのIT)だ」と言った瞬間に、すべて変わると思います。日本のエンジニアリングは高付加価値ビジネスであり、攻めのITに行くべきです。

 SEは二極化します。人月勝負で年収は500万~600万円のSEと、年収1000万~1500万円で、面白い仕事しかしないSEのどちらかに分かれていくと思います。それならウルシステムズは後者しか求めない。

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