10月27日から3日間、東京・品川で「OpenStack Summit Tokyo」が開催されている。日本のイベントというよりも、国際イベントが東京で開催されているという位置づけであるため、スピーカー、来場者ともに国際色豊かなのが印象的だ。
企業がクラウド基盤を構築するにあたり、サーバやネットワークの仮想化などの機能として、VMwareやMicrosoftといったベンダーが提供する選択肢と並んで、OpenStackを中心としたオープンソースを選ぶようになってきている。
Intel Open Source Technology Centerのゼネラルマネージャーを務めるImad Sousou氏
さまざまなITベンダーも、OpenStackへの注力を表明している。プロセッサ最大手Intelもその1つ。初日の基調講演にも登壇した米Intelのソフトウェア/サービスグループのバイスプレジデントで、Intel Open Source Technology Centerのゼネラルマネージャーを務めるImad Sousou氏に、話を聞いた。
IntelのOpenStackに注力する最終的な目的は、あくまでも、コアビジネスであるプロセッサを中心としたプラットフォームの収益増だという。
Internet of Things(IoT)の進展などにより、大量のトラフィックがネットワークを流れる時、それを処理するデータセンターが必要になる。「産業のトレンドを見極め、拡大するトラフィックをIntel Platformで受け止められるようにする」(Sousou氏)
そのデータセンター構築において、イニシアティブを取るのがIntelの戦略だ。Intelの広報によると、スマホなどのモバイル端末が200台増えるごとに、その処理のためにサーバが1台必要になるとのこと。「モバイル端末向けプロセッサでIntelが出遅れた」との指摘があるが、端末が増える分だけ、確実に同社の収益が増えるのも事実。もちろん、モバイル端末自体の市場を取れればそれに越したことはない、とも加えている。
Sousou氏は、Intelによる最近のOpenStackへの取り組みについて解説する。7月に、クラウドの普及とソフトウェアの開発を推進する「Cloud for All」という新構想を発表した。投資と業界のコラボレーションを交えた新たな戦略だ。
8月24日には、OpenStackの開発を手掛けるMirantisに1億ドル出資することを表明した。「OpenStackにおけるエンジニアリング面での貢献とともに、ISV(独立系ソフトウェアベンダー)がより良いソフトウェアを開発できるようにするといった意味で、エコシステムの確立を支援したい」(Sousou氏)としている。
エンタープライズシステムにおける、オンプレミス、プライベートクラウド、パブリッククラウドのワークロードの比率の見通しについて「まだ語るのは時期尚早」としながら、「パブリックとプライベートの両クラウド間の相互接続性を確保することが重要」とコメントした。
今回、技術的なポイントの1つになったのが、OpenStackの仮想ネットワークを制御するコンポーネント「Neutron」と、ベアメタルサーバを管理するコンポーネント「Ironic」を仮想スイッチ機能で連携させる技術。仮想マシンと仮想化していないサーバをOpenStack上で一括管理できるようにするもので、Sousou氏が強調する相互接続性確保という話にもつながってくる。
ヤフージャパンの事例は「世界でも初めて」
東京で開催されたOpenStack Summitについて「5000人を超える来場者を集めており、すばらしい。NECなどがOpenStackのボードメンバーを務めているが、日本企業がOpenStack発展において大きく貢献していることを認識した」とのこと。
ユーザー動向では「(米Yahoo!ではなく)ヤフージャパンのOpenStackを用いたスケールアップの事例に感銘を受けた。その方法は非常に難しく、ワールドワイドで見ても初めてと言えるものだった」と話している。
そのヤフージャパンは初日の基調講演で、OpenStackをコアにデータセンターを抽象化したと説明。複数のベンダーが共同でソフトウェアを開発して共通のAPIでつなぐこと、その成果をコミュニティに戻すことが非常に重要であるとの見解を示した。