なぜUIやUXの向上を推進すべきなのか
ITが世の中に登場し始めた時代は、開発者はシステム内部での「機能」を整えるのが精一杯だったし、それがビジネスとして成り立ってきた。しかし、ITが広く普及しさまざまに発展した現代では、それだけでは足りないことが多くなっている。
ユーザーが使うシステムは、ある意味、ユーザー(の利用)まで含めて「完成」するものであり、ユーザーとシステムの間、すなわちユーザーインターフェース(User Interface:UI)は、システムが適切に機能するかどうかを決める重要な要素である。そして、ユーザーにシステムを使ってもらうにあたっては、ユーザーがシステムを利用した際に受ける反応や感覚、すなわちユーザー体験(User eXperience:UX)も考慮しなければならない。
厳しい言い方をすると、システムに単純に「必要な機能がある」のは最低ラインですらなく、それがきちんと「使える」ようになっているのが最低ラインである。そしてその上に「楽に使える/安心して使える/うまく使える/使って満足できる」などがあって、はじめて「よいもの」と言える。現代は、自社の製品やサービスを「差別化」したければ、主にこの最低ラインより上の要素で行わなければならない時代となってきている。
これは、ECサイトに商品を買いに来た人のような、一般のユーザーが使うシステムの場合だけの話ではない。「ユーザー」が、オフィスや店舗や工場などで業務システムを使う人、あるいは開発用のシステムを使う人などの場合でも同様である。
このように、ITにまつわる幅広い場面でUIやUXのことをきちんと考えることは必須になっているが、あなたの会社・組織にはUIやUXを扱う部署はあるだろうか。あるとしたら、何をミッションとしているだろうか。メンバーはどういうバックグラウンド、どういうスキルを持っているだろうか。
ないとしたら、どういう部署があればよいだろうか。どういうメンバーを集めればよいだろうか。そもそも「部署」という形がよいのだろうか――。この連載では、その辺りを考えていきたい。
必要性・重要性を説得する
組織に新たにUIやUXを扱う部署やグループを作る、あるいは担当者を決めるとしたら、まずはその必要性・重要性を周囲の人々や上司、経営陣に理解・納得してもらわねばならない。
UIやUXの重要性が組織内であまり理解されていない、ということもまだ少なくないだろう。何となく分かっていても、「なぜ」「どのように」重要か、をきちんと理解できていることはさらに少ないだろう。これを読んでいるあなた自身は理解・納得し、具体的に説明できるだろうか。