NECは、11月30日、同社のベクトル型スーパーコンピュータ「SX-ACE」をドイツのキール大学、アルフレッドウェゲナー極地海洋研究所、シュツットガルトハイパフォーマンス計算センターに納入したと発表した。
キール大学は、同じくキールに設立されているドイツの主要な海洋研究所であるGEOMARと緊密な協力関係にあり、高性能計算環境も提供している。アルフレッドウェゲナー極地海洋研究所は、ドイツ研究センターヘルムホルツ協会の1つで地球の極域を主な対象として、海洋物理、海洋化学・生態、さらに気候変化などの研究を行う機関として知られている。
また、シュツットガルトハイパフォーマンス計算センターは、研究機関や民間企業に幅広く計算リソースを提供し、高性能計算に関する欧州有数の拠点。
ベクトル型スーパーコンピュータは、ベクトルプロセッサという科学技術計算向きの高速プロセッサを搭載したスーパーコンピュータ。1つのベクトル命令で配列要素を一括処理することにより、大規模かつ複雑な計算を高速処理でき、気象、航空宇宙、環境、流体解析、物性計算などに適している。
「SX-ACE」は、超高速な並列処理を要する科学技術計算や大規模なデータ解析を伴う高度なシミュレーションに最適と評価されており、キール大学では気候変化や海洋現象のシミュレーションに利用する。
また、アルフレッドウェゲナー極地海洋研究所では、地球の極域を中心とした海洋物理・化学や気候変化に関するシミュレーションに利用する。さらにシュツットガルトハイパフォーマンス計算センターでは、自動車、素材、化学分野などの研究開発、産業応用に活用する。
SX-ACE(最大8ラック構成の筐体)(NEC提供)
「SX-ACE」は、マルチコア型ベクトルCPUを搭載し、CPUコア当たりで世界トップクラスの演算性能(64ギガフロップス)およびメモリ帯域(64ギガバイト/秒)を実現している。単一ラック当たりの性能は前機種に比べ10倍(NEC調べ)のラック演算性能16テラフロップス、メモリ帯域16テラバイト/秒の性能を誇る。
また、NEC独自の最先端LSIテクノロジ、高密度設計、高効率冷却技術などにより、従来機種と比較し、消費電力を10分の1、設置面積を5分の1に低減しているという。
今回、キール大学では256ノード(最大理論性能65.5テラフロップス)、アルフレッドウェゲナー極地海洋研究所では32ノード(最大理論性能8.2テラフロップス)、シュツットガルトハイパフォーマンス計算センターでは、64ノード(最大理論性能16.4テラフロップス)の「SX-ACE」がそれぞれ納入された。
「SX-ACE」について、キール大学では、数千年の長期間にわたる古気候シミュレーションをアプリケーションの修正なく実行可能できること、演算処理当たりのエネルギー消費が前機種「SX-9」の20分の1以下に削減したことなどを評価した。
また、アルフレッドウェゲナー極地海洋研究所では、コア当たりおよびシステム全体で従来導入していたスーパーコンピュータと比較して2倍の演算能力を有する一方、20%以下の消費電力で稼働すること、有効なディスクスペースが5倍以上に拡大されたことなどを評価している。
シュツットガルトハイパフォーマンス計算センターでは、「SX-ACE」に搭載されているNECの分散・並列ファイルシステムが、さまざまな領域の複雑なアプリケーションの改良に役立つことを評価している。