本連載「松岡功の『今週の明言』」では毎週、ICT業界のキーパーソンたちが記者会見やイベントなどで明言した言葉をいくつか取り上げ、その意味や背景などを解説している。
今回は、シスコシステムズの鈴木和洋 専務執行役員と、IDCフロンティアの石田誠司 取締役の発言を紹介する。
「IoTもIoEも言っていることは同じ。ビジネスにどう活用するかが重要」 (シスコシステムズ 鈴木和洋 専務執行役員)
シスコシステムズ 専務執行役員 鈴木和洋氏'
シスコシステムズが先ごろ、IoT(Internet of Things)戦略に関する記者説明会を開いた。シスコはこれまでIoTではなく「IoE(Internet of Everything)」という言葉を使ってきたが、この分野を担当する鈴木氏の冒頭の発言はその会見で、今後はIoEにこだわらない姿勢を明示したものと受け取れる。
シスコはかねて、「これまで結びつきのなかったヒト、プロセス、データ、モノのすべてをインターネットでつないで新しい価値を創造するIoE」を提唱してきた。「インターネットですべてをつなぐ」ことを意味するIoEは、「あらゆるモノがインターネットにつながる」ことを意味するIoTを拡張した考え方だ。
だが、IoTは今や注目の的となり、世の中に知れわたる言葉になった。そうした状況もあってか、シスコも今回の会見ではIoEでなくIoTを前面に打ち出していた。そこで、会見の質疑応答で「シスコは今後、IoEではなくIoTと表現するのか」と聞いてみたところ、鈴木氏は次のように答えた。
「IoTもIoEも言っていることは同じ。もはやこの分野においての定義の論議に時間を費やしても意味がない。それよりもIoTをビジネスにどう活用していくかを考え、実践していくことが重要だ」
冒頭の発言はこの回答のエッセンスである。そのうえで鈴木氏はIoT分野におけるシスコのアドバンテージについて、「IoTはこれまでつながっていなかったモノをインターネットにつなげていくこと。シスコはその“つなげる”プロフェッショナルであり、いろいろなモノをつなげて効率よく安全にデータを集めるところを得意とし、すでに実績を上げてきている。この積み重ねこそが大きなアドバンテージだ」と強調した。
ちなみに、シスコはIoTを実現するアーキテクチャとして図のような7階層の構造を描き、これに基づいてネットワーク機器を中心にさまざまな製品を提供している。中でもデータ発生現場に近い場所でリアルタイムな処理を行うエッジコンピューティング(シスコは“フォグコンピューティング”と呼ぶ)の重要性を早くから訴えており、IoTへの取り組みにおいてはICTベンダーの中でも先頭を走っている印象が強い。
シスコシステムズが描くIoTを実現するアーキテクチャ