前回まで、ワークスタイル変革の実現に必要なデスクトップ環境、コラボレーションと解説してきた。今回は、スマートデバイスの活用について紹介する。
連載第1回の「今、なぜワークスタイル変革が必要なのか」でも解説したように、スマートデバイスの普及に伴い、メール確認や資料作成など、業務でスマートデバイスを利用するケースが増えている。しかしその反面、PCほど、企業側でセキュリティ(紛失、盗難)対策などの管理手法が確立されていないケースも多い。だからこそ、スマートデバイスを業務利用するうえで、如何にセキュリティを担保しつつ、業務の効率性・生産性を向上させる環境を整備するかが重要となる。
今回は、スマートデバイスで業務を行うための環境整備の足掛かりとなる、ビジネスモビリティの重要性および管理手法についてモバイル機器管理(MDM)や企業向けモビリティ管理システム(EMM)を中心に解説する。
ビジネスモビリティとその重要性
モビリティを高め、利便性や生産性を向上させるにはいくつかの段階がある。これはビジネスモビリティの成熟度と言い換えてもいい。
最初の段階は、「個の生産性向上」である。ここではセキュアメールやセキュアブラウザを導入し、社内のリソースにスマートデバイスからアクセスできるようにすることで利便性を高める。導入自体が容易であり、またメールやブラウザはスマートデバイスからもっとも利用されるアプリケーションであるため比較的導入効果が高い。しかしながら、使用可能なアプリケーションは限定的で、コラボレーションの促進や意思決定の迅速化には寄与できない。
そこで次の段階にあるのが「組織の生産性向上」である。この段階では社内のコラボレーション、コミュニケーションが促進するツールも導入されスマートデバイスから場所を問わず(例えば自宅などから)会議に参加することや、チャットを利用して迅速に連絡を取り合う事で業務を効率化するといったことが可能になる。本連載記事においても取り上げているので、ぜひご参照願いたい。
そしてビジネスモビリティの最終段階になるとツールとしてはEMMが導入され、業務はコアビジネスを含めてスマートデバイスが中心の働き方になる。モバイルネイティブアプリ、クラウドアプリを活用し迅速に意思決定ができ、顧客の要望に返答できるようになり生産性や売上の拡大に大きく貢献する。これらを実現するためにセキュリティも確保され安全、安心に社内外でのツールを利用でき、社外との連携も可能な状態になる。