AWSと組むエリクソン--通信業界イノベーションのゆくえ - (page 3)

末岡洋子

2016-03-18 08:00

 2015年末に発表したCiscoとの提携もまた、”変化するEricsson”の一部となる。2社は提携の下、ハードウェア4分野(IPコア、固定ケーブルブロードバンドアクセス、ビジネス向けVPN、モバイルバックホール)と、ソフトウェアとサービス(IPトランスフォーメーションサービス、IP&ITマネージドサービス)で営業活動を含む協業を行うことになっている。

 MWCは提携発表から90日後となったが、両社は提携に至るまで14カ月をかけて作業をしてきたとのこと。そのため発表後は迅速に計画を進めることができ、「すでに200社以上の顧客とエンゲージしており、契約に結びついた例も多数出ている」とEricssonのRima Qureshi氏とCiscoのHilton Romanski氏は胸を張った。EricssonのVestberg氏は「提携によりそれぞれ10億ドルの売り上げ増を狙っている」と想定されるメリットを再度強調した。

左からEricssonのCEO、Hans Vestberg氏、Ericssonの最高戦略責任者、Rima Qureshi氏、Ciscoの最高戦略責任者兼シニアバイスプレジデント、Hilton Romanski氏
左からEricssonのCEO、Hans Vestberg氏、Ericssonの最高戦略責任者、Rima Qureshi氏、Ciscoの最高戦略責任者兼シニアバイスプレジデント、Hilton Romanski氏

 そしてMWCでは、共同の研究開発の成果としてマルチドメイン、マルチベンダーのネットワーク環境を管理できる「Dynamic Service Manager」を発表した。Ericssonは会期中、ブースで開催した顧客向けのイベントにCiscoのCEO、Chuck Robbins氏を招くなど、提携が順調に進んでいることもアピールした。

 Ericssonのこのような攻めの姿勢を、”バイキングモード”と形容するのが、クラウド技術ディレクターとして2年前から同社でクラウド事業の立ち上げを引き受けてきたJason Hoffman氏だ。バイキングとはもちろん、Ericssonが本拠地を置くスウェーデンなど北欧の歴史に出てくる海賊たちだ。

Ericssonのクラウド技術ディレクターJason Hoffman氏
Ericssonのクラウド技術ディレクターJason Hoffman氏

 米国出身で西海岸のハイテクカルチャーに長く身を置いたHoffman氏は、Ericssonの強さを、農耕とバイキングの両方のモードで説明する――同社の中核である無線技術では「おとなしいが淡々と収穫のために働く」農耕モードで進め、クラウドではバイキングモードで攻めるというものだ。実はこの表現は1年半前にEricssonの本社取材で初めてHoffman氏に会ったときに聞いたのだが、今年のMWCで、Hoffman氏は「バイキングモードが順調に進んでいる」としてクラウド戦略を説明してくれた。

 Ericssonのこれらの提携戦略は、再編が進む通信インフラ市場(NokiaによるAlcatel-Lucentの買収など)とそこで台頭した中国Huawei Technologiesへの対抗と位置付けられるが、Hoffman氏は意に介さない。

 「2Gから5GまですべてをできるのはHuaweiとEricssonぐらいだろう」とHuaweiの存在を認めながらも、「(サーバ、ストレージなどクラウドのパーツをすべてをそろえる戦略の)Huaweiは中国企業であり、中国で大きなボリュームを持つので中国の市場ニーズに応える必要がある。われわれはグローバルであり、グローバルの市場動向を見ている」とHoffman氏。「われわれの顧客は、FacebookやGoogleなどのように効率よくなりたいと思っており、ここではAWSと組むのが最善だと判断した」と明かす。提携に至った背景として、共通の顧客が多かったことも要因にあったようだ。「AWSと共同で、通信事業者のITを変えていく」という。

 Hoffman氏は自身が布石を打ったこれらの戦略に自信だ。「2年前のMWCでは、クラウドについて顧客に話しても理解してもらえなかった。だが今年は違う」とHoffman氏、通信事業者は変革に向けて機が熟しつつあるという見解を見せた。

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