2014年春よりEricssonでクラウド事業を率いるJason Hoffman氏。
クラウドというとAmazon Web Services(AWS)、Google、Microsoftなど米国のIT企業の独断場と言えなくもないが、世界のモバイル通信の4割が同社の機器を利用しているという無線通信最大手北欧Ericssonは、テレコム分野で築いた地位を土台にクラウドに拡大を狙っている。
同社は2014年、パブリッククラウド「Joyent」の共同創業者Jason Hoffman氏を迎え入れ、クラウド分野のポートフォリオ確立を進めている。大手ITベンダーがひしめくクラウド市場にチャンスはあるのか――Ericssonのスウェーデン本社でHoffman氏に話を聞いた。
テレコムは世界レベルのネットワーク
病理学者の顔も持つHoffman氏は2004年、Joyentを共同創業した(当初の社名はTextDrive)。まだクラウドコンピューティングという言葉が市民権を得ていない時代だったが、ホスティング企業としてスタートし、その後IaaSなどパブリッククラウドに事業を拡大する。Hoffmann氏はJoyentで最高執行責任者(COO)、最高技術責任者(CTO)を務めた後、2013年秋に退社した。
Joyent時代から鋭い視点と率直な発言で知られる
その後動向が注目されたが、2014年春にEricssonへ。現在クラウドソフトウェア担当トップとして、クラウド事業の製品、アーキテクチャ、開発などの取り組みを統括している。
なぜEricssonなのか。Hoffman氏は「クラウド」を新しいパラダイムとして強調するIT側に対し、音声とデータ通信のためのモバイルネットワークを持つテレコム業界は「すでにグローバル級のネットワークインフラを構築している」と言う。
「Apple Storeに行ってiPhoneを買う。世界中のどこにいてもすぐに使うことができる。ネットワークが張り巡らされているからだ」とHoffman氏。日々当たり前のように利用しているモバイルネットワークだが、全世界で利用できる標準的なネットワークの構築と維持は「簡単なタスクではない」とHoffman氏は言う。
一方で、Hoffman氏は、「クラウドは基本的にインフラビジネス」であり、「新しい技術サイクル」とも表現する。「いま起こっていることは、新しい技術のサイクルに入りつつあるということだ」。これは1960年代にIBMが開始したメインフレームから同じフェーズをたどっているという。そのフェイズとは、(1)標準化、(2)コンソリデーション、(3)自動化・オートメーション、(4)ガバナンス・管理だ。
ただし、クラウドの場合は(2)コンソリデーションと(3)自動化・オートメーションの間に、「プログラマブルにする」というフェーズが入ることになる。(2)はデータセンターを指し、自動車工場がいかにたくさんの製品を作るのかが大切なら、データセンターはいかに多くのデジタルグッズ(サービス)を提供できるのかに主眼が置かれる。(3)は運営費用(Opex)を下げることで、この間にプログラマブル(プログラム可能)のための物理抽出レイヤーが入ることで、システムへのアクセスが可能となる、とHoffman氏は持論を説明する。
なお、現在クラウド導入が進んでいない理由の多くは、(5)のガバナンスにあるとHoffman氏。企業が導入をためらう理由として挙がるのはセキュリティ、品質、性能などで、これらは(5)に入るためだ。