MicrosoftはAIチャットボット「Tay」の不適切な発言の後始末に追われている。その一方で、同社の研究者らは人とマシンのやり取りを深めていくための研究を推し進めている。
Microsoftの研究によると、優れた質問をするうえで必要となる認知能力は人間固有のもののようだという。
提供:iStockphoto/Issam Khriji
何らかの画像を目にすると、たいていの場合、あのような爆発で誰も怪我はしなかったのだろうか、あるいは未来は本当にこういった感じになるのだろうかといったいくつかの疑問が頭に浮かんでくるはずだ。
MicrosoftとFacebookは米大学の研究者らと協力し、人間が写真を見た際に頭をよぎる、好奇心と関連付けられる反応をコンピュータ上でシミュレートし、人間と似たような質問をさせるためにニューラルネットワークを訓練した。
その結果は、さまざまなニューラルネットワークの形態によって大きく異なった。一部のニューラルネットワークは他のものよりも人間らしい質問を生成した。最も望ましいケースでは、衝突でぺしゃんこになった自動車の写真を入力した際に「この事故で誰かけがをしましたか?」という質問が返ってきた。
最も期待はずれなケースでも、ハリケーン襲来後の写真を入力した際に、「この落下は何によって引き起こされたのですか?」という無意味なものだった。
コンピュータによって生成された質問例(GRNNとKNNの欄)
提供:コーネル大学図書館
ここでより重要な疑問は、そもそもなぜこういった反応をシミュレートするのだろうかというものだ。研究者らによるとこれは、Appleの「Siri」といった今日の仮想アシスタントよりも複雑な質問や回答を行えるマシンを作り出すためだという。
研究者らは「Generating Natural Questions About an Image」(画像に基づく自然な質問文の生成)という論文に「適切かつ当を得た質問を行うシステムは、単にユーザーの関心を引きつけたり、作業に特化した情報を引き出すといった用途にかかわらず、あらゆる対話エージェントの統合コンポーネントとして使用できる」と記している。
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また、「さらに、どのような質問をするのかを見ることで、理解度も評価できる。いくつかの教育手法では、学生らが適切な質問をできるかどうかで理解度を評価するようになっている」とも記している。
さらにチームは、画像に何が写っているのかを描写するという、機械学習システムにおける典型的な壁をも乗り越えたいと願っている。
こういったこと自体は難関であるうえ、この論文によると、興味深い質問を投げかけるというのは、動物のなかでも人間特有の能力なのだという。論文には以下のように記されている。
「自然言語処理(NLP)分野において、質問の生成タスクは平叙文における構文的な言い換えタスクよりも重要な意味合いを持っている」
「興味深いことに、優れた質問を投げかけるというのは、霊長類のなかでもヒト特有の認識能力のようだ」
人間とAIのやり取りに関するMicrosoftの別の研究プロジェクトは最近、ちょっとした騒ぎを引き起こした。Tayというチャットボットは、一部の一般大衆による思想教育の結果、挑発的かつ差別を助長する意見をツイートするようになったため、MicrosoftはTayをオフラインにせざるを得なくなった。