こうした事業ポートフォリオによって、望月氏は2017年度の最重要テーマとして、「OpenStackでトップシェアを獲得する」「管理ソフトであるAnsibleビジネスを立ち上げる」「企業によるコンテナ活用を定着させる」「クラウドおよびオンプレミスのすべての環境でRHELのトップシェアを取り続ける」の4つを掲げた。
この最重要テーマの中で、筆者がとくに印象深かったのは4つ目のRHELの適用範囲の広さだ。
もともとオンプレミスでは有力なサーバベンダー各社と長年にわたって協業しているが、今ではパブリッククラウドサービスを展開する有力なベンダー各社とも協業を図り、さらにRHEL OpenStack Platformによってプライベートクラウドの構築に向けてもパートナーとの協業に広がりを見せている。この適用範囲の広さは、まさにRHELならではのパートナーエコシステムを形成している。
2015年11月に日本法人の社長に就任した望月氏にとっては、これからが経営手腕の見せどころである。RHELをベースに思惑通り事業領域を広げていけるかどうか、注目しておきたい。
「従来型ストレージはハイパーコンバージドインフラにマイグレーションされていく」 (シスコシステムズ 石田浩之 データセンター/バーチャライゼーション事業 部長)
シスコシステムズの石田浩之 データセンター/バーチャライゼーション事業 部長
シスコシステムズが先ごろ、ハイパーコンバージドインフラストラクチャの新製品「Cisco HyperFlexシステム」を国内で提供開始すると発表した。石田氏の冒頭の発言はその発表会見で、ハイパーコンバージドインフラが今後、従来型ストレージに取って代わっていくとの見方を示したものである。
新製品の詳しい内容については関連記事を参照いただくとして、ここではシスコが2009年に市場投入してヒット商品に育て上げたサーバ製品「Cisco UCS(Unifined Computing System)」とCisco HyperFlexシステムの違いや、ハイパーコンバージドインフラ市場の今後の見通しについて石田氏が分かりやすく説明していたので、その内容を紹介しておこう。
石田氏によると、Cisco UCSはサーバとネットワークや管理ソフトを統合し、複雑化するインフラ環境を集約してシンプルに利用できるようにした製品である。
一方、ハイパーコンバージドインフラであるCisco HyperFlexシステムは、サーバ、ネットワーク、管理ソフトに加えてストレージやハイパーバイザを統合し、インフラ環境をより集約かつシンプルに扱えるようにした製品である。サーバ、ネットワーク、管理ソフトの部分はCisco UCSが適用されている。つまり、Cisco UCSの進化形ともいえる。
また、ハイパーコンバージドインフラ市場の今後の展望については、「全世界で2020年までに平均年間成長率60%、今後12年間で380億ドル規模の市場に成長する」「ほとんどが従来型ストレージからのマイグレーションによって成長する」「日本市場は2014年から2015年にかけて220%の急成長を遂げ、2015年は3400万ドルの市場規模になった」といった内容を紹介。図のように、ハイパーコンバージドインフラはこれから従来型ストレージに取って代わっていくとの見方を示した。
ハイパーコンバージドインフラ市場の推移(出典:シスコシステムズの資料)
同氏はCisco HyperFlexシステムの用途として、まずはVDIやリモート拠点での利用、テストおよびソフトウェア開発環境などを想定しているという。
ハイパーコンバージドインフラ市場は大手ベンダーだけでなくベンチャー企業も相次いで参入している。今回のシスコの参入によって、ますます激戦区となりそうだ。