海外コメンタリー

OpenStackに賭けるレッドハット--新「Cloud Suite」と「OpenStack Platform 8」リリース

Steven J. Vaughan-Nichols (Special to ZDNET.com) 翻訳校正: 石橋啓一郎

2016-04-25 06:30

 Red Hatが世界的なLinux企業であることは周知の事実だ。しかし最近では、Red Hatは世界をリードするプライベートクラウド企業になろうとしている。これを実現するため、Red Hatはオープンソースの「OpenStack」によるIaaS(サービスとしてのインフラストラクチャ)クラウドへの取り組みを進めている。

 Red Hatの計画にはいくつか障害がある。まず、もっとも有力なOpenStackのクラウドオペレーティングシステムは、Canonicalの「Ubuntu」だ。IBMなどの大手テクノロジ企業もOpenStack市場の競争に参加しているし、Mirantisなどの新興のOpenStack専業企業もこの分野に参入してきている。

 しかし、Red Hatはまったく手を緩めていない。Red HatはOpenStack Summitの直前になって、「Red Hat Cloud Suite」と「Red Hat OpenStack Platform 8」の一般提供を発表した。これによりRed Hatは、コンテナアプリケーション用のPaaS(サービスとしてのプラットフォーム)である「OpenShift」、大規模スケーラブルIaaSであるRed Hat OpenStack Platform 8、統合管理ツール群である「Red Hat CloudForms」からなる完全な統合ハイブリッドクラウドスタックを提供することになった。顧客は個々の製品を個別に利用することもできるし、Red Hat Cloud Suiteで、導入しやすいクラウドをまとめて利用することもできる。

 Red Hatが提供するハイブリッドクラウド製品の中心となるのがRed Hat OpenStack Platform 8だ。Red Hat OpenStack Platform 8は2015年秋にリリースされた「OpenStack Liberty」をベースにしている。OpenStackの最新リリースである「Mitaka」は、リリースからまだ日が浅く、商用のOpenStackディストリビューショではまだ導入されていない。

 Red Hat OpenStack Platform 8は、実績のある基盤である「Red Hat Enterprise Linux」(RHEL)とOpenStackのテクノロジを統合した、本番環境で利用可能なクラウドプラットフォームだ。Red Hat OpenStack Platform 8には、以下のネイティブに利用できる機能が追加された。

  • 自動アップグレードおよびアップデート機能。大規模なポイントリリースへのアップグレードや、小規模なアップデートを簡単に実施することができる。これは、Red Hat OpenStack Platform directorのコンポーネントの1つが、OpenStackのコアサービスや、directorそのものに対するシステム規模の必須のアップデートを自動的に適用することによって実現されている。これによって、健全で安定したOpenStackクラウドを提供しつつ、ダウンタイムを最小化できる。
  • インフラストラクチャとワークロードの管理機能。Red Hat CloudFormsを利用することで、OpenStackのインフラストラクチャおよびワークロードのライフサイクル管理と運用管理を行うことができる。CloudFormsは、OpenStack上で実行されるLinuxとWindowsの両方のワークロードを管理でき、これにはライフサイクル管理、使用状況の監視とレポート、マルチノードオーケストレーション、ガバナンスおよびポリシーベースのアクセスコントロールが含まれる。
  • ソフトウェア定義ストレージ。Red Hatの大規模スケーラブルソフトウェア定義ストレージソリューションである「Red Hat Ceph Storage」が、Red Hat OpenStack Platformに同梱されるようになった。Red Hat Ceph Storageは、初期状態で柔軟性が高い64テラバイトのオブジェクトストレージとブロックストレージを提供する。ほとんどのビッグデータプロジェクトはこの容量で十分のはずだ。
  •  またRed Hatは、このリリースで顧客として通信事業者を獲得しようと努力している。通信事業者は、今やOpenStackのすべての本番環境の10%を占めており、急速にOpenStackの導入を進めている。Red Hat OpenStack Platform 8には、ネットワーク仮想化機能を改善するための、いくつかの重要なテクニカルプレビューが新しく追加されている。このリリースでは、リアルタイムKVMを利用した遅延の予測可能性の向上、「Data Plan Development Kit」(DPDK)で高速化された「Open vSwitch」によるネットワークI/Oの性能改善、およびソフトウェア定義ネットワーク(SDN)プラグインである「OpenDaylight」が含まれている。

     Red Hatはこれを基盤として利用することで、顧客にRed Hat Cloud Suiteをワンストップのプライベートクラウドソリューションとして利用してもらおうとしている。またRed Hat Cloud Suiteでは、同社のコンテナアプリケーションプラットフォームである「OpenShift Enterprise」を、一般的な管理フレームワークであるRed Hat CloudFormsと組み合わせている。

    「Red Hat Cloud Suite」と「Red Hat OpenStack Platform 8」の一般提供発表
    提供:Red Hat

ZDNET Japan 記事を毎朝メールでまとめ読み(登録無料)

ホワイトペーパー

新着

ランキング

  1. セキュリティ

    初心者にも優しく解説!ゼロトラストネットワークアクセスのメリットと効果的な導入法

  2. ビジネスアプリケーション

    Google が推奨する生成 AI のスタートアップガイド、 AI を活用して市場投入への時間を短縮

  3. セキュリティ

    「2024年版脅威ハンティングレポート」より—アジアでサイバー攻撃の標的になりやすい業界とは?

  4. ビジネスアプリケーション

    ITR調査結果から導くDX浸透・定着化-“9割の国内企業がDX推進中も成果が出ているのはごく一部”

  5. ビジネスアプリケーション

    改めて知っておきたい、生成AI活用が期待される業務と3つのリスク

ZDNET Japan クイックポール

所属する組織のデータ活用状況はどの段階にありますか?

NEWSLETTERS

エンタープライズコンピューティングの最前線を配信

ZDNET Japanは、CIOとITマネージャーを対象に、ビジネス課題の解決とITを活用した新たな価値創造を支援します。
ITビジネス全般については、CNET Japanをご覧ください。

このサイトでは、利用状況の把握や広告配信などのために、Cookieなどを使用してアクセスデータを取得・利用しています。 これ以降ページを遷移した場合、Cookieなどの設定や使用に同意したことになります。
Cookieなどの設定や使用の詳細、オプトアウトについては詳細をご覧ください。
[ 閉じる ]