オープンイノベーションには何が必要か--スタートアップイベント「Slush」の挑戦

吉澤亨史 山田竜司 (編集部)

2016-05-12 18:21

 フィンランド発祥の世界最大級のスタートアップイベント「Slush Asia 2016」が今年も幕張メッセで5月13~14日に開催される。今回は2日間に拡大するほか、ピッチコンテストでは60社のスタートアップが英語でプレゼンテ―ションし、積極的に投資家と起業家をマッチングする仕組みも提供される。

 今回はSlush Asiaを主催するAntti Sonninen氏と、2015年のSlush Asiaで共同で最高マーケティング責任者(CMO)を務めたアクセンチュアのチーフ・マーケティング・イノベーターである加治慶光氏に話を聞いた。

――アクセンチュアを含め、大企業とベンチャーの協業など、自社の強みと自社では持つのが難しい他社の力を融合させて製品やサービスを生み出す「オープンイノベーション」に取り組む企業が増えています。なぜこのような現象が起きていると思いますか。

Antti氏 オープンイノベーションは、日本だけでなく世界各国でトレンドになっています。(初期投資を必要としないクラウドなど)技術の進化によって簡単に会社を立ち上げられるようになり、しかも今まで大企業でしかできなかったことがスタートアップでもできるようになっています。また、インターネットなどのコミュニケーションツールによってイノベーションも加速しているので、大企業とスタートアップが協力することで互いにより早い成長を実現できるのも理由の一つだと思います。


Slush Asiaを主催するAntti Sonninen氏

 そのニーズは特に日本が強いと思っています。日本では、学生が卒業すると大企業へ就職することが一般的ですし、企業も新規事業開発を行う際には社内に研究室を作ります。

 一方、マーケットの要素もあると思いますが、イノベーションが加速している現在では、これまでのやり方から、学生は卒業したら起業する、大企業はそうしたスタートアップと組んで新規事業を開発する。そのように変化することで、日本はもっと成長できると思うのです。

加治氏 私も同じように思いますが、別の側面でも注目しています。たとえば経営学者のPeter Drucker氏は、イノベーションが起こるいくつかのチャンスの中で、人口構成比の変化に注目すべきと言っています。人口構成比をピラミッドで示した場合に、経済的にもっとも安定しているのは五角形型だといいます。就労可能人口が十分にあって、消費も活発になるためです。

 日本を見てみると、1950年代はアフリカに似た形でした。ここから当時の通商産業省が注力する産業として自動車と電化製品を選び、そこに安定した労働力を送ることによって高度成長期を迎えました。そして30年間にわたって安定した高度経済成長を続けましたが、それが行き過ぎてしまい、下の世代が減っていく構造になっています。アフリカはずっと形が変わりませんが、これは新生児・乳児死亡率の高さや平均寿命の短さからです。日本は平均寿命が長く、高齢者がどんどん増えていきます。

 高度成長期のような人口の増え方はもうないですし、若い世代が減って高齢者が増えていく。こうした現状を逆手にとりClayton Christensen氏が提唱する“効率化のためのイノベーション”に取り組むべきです。このイノベーションは先進国でのみ実現可能である一方、労働者の仕事を奪うために実現しにくいのですが、日本では就労可能人口の減少が急速に進むため、課題をクリアしています。課題先進国としての優位性を生かし、これまでの大量生産を効率よく行うのではなく、イノベーションが求められています。


世界の人口構成ピラミッド(予測)

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