新中計でセイコーエプソンが狙うもの(後編)--複写機市場本格参入の成否 - (page 3)

大河原克行 2016年06月05日 08時00分

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 マイクロデバイス事業では、従来の水晶振動子に比べ、2桁以上の高い精度を維持しながら、サイズを16分の1にした画期的なデバイスを開発したことに触れながら、「このような高精度、高信頼性を実現した製品をいくつも生み出し、また、性能だけでなく、合理化や自動化の推進による徹底したコストダウンを図り、競争力をさらに強化。安定的な事業基盤を作り上げる」と語った。

 「半導体では、低消費電力技術、アナログ技術などの強みを生かしたビジネスを継続させながら、顧客価値を最大化させるデバイス開発に注力。新しいコア技術やコアデバイスを生み出していく」

成長に向けた基盤を作り上げる

 セイコーエプソンは、前中期経営計画となる「SE15 後期新中期経営計画」で「次期中期経営計画では、再び力強く成長する企業を目指すことになる」としていた。

 だが、発表されたEpson 25第1期中期経営計画は、最終年度となる2018年度の売上高は1兆2000億円、事業利益960億円、売上高経常利益率(Rate Of Sales:ROS)は8%、株主資本利益率(Return On Equity:ROE)では継続的に10%以上を目指す。

 2015年度連結業績(2013年度から国際会計基準)が売上高が1兆924億円、事業利益は849億円、ROSは7.8%、ROEは9.5%であることと比較すると、「力強い成長」という言葉とはかけ離れていると言わざるを得ない。その点では、今回の中期経営計画の策定で方向転換があったことは否めないだろう。これは碓井氏も認めているところだ。

 なぜ、「力強い成長」からの方向転換があったのだろうか。

 碓井氏は、「SE15で期間内にやり切れなかった事業、領域の遅れが影響している。力強く成長する準備ができていない」としながらも、次のように説明する。

 「超高速コピー機や産業・商業向けプリンタ、オフィス向けプリンタなど、新たな領域で本格的に製品を投入するフェーズに入る。製品化は、最も資金がかかるフェーズになる。この3年間は、設備投資をしっかりと行い、顧客基盤を広げるための営業体制強化へとの投資も図る。この点を重視していきたい」

 セイコーエプソンは、Epson 25第1期中期経営計画の3年間で、2100億円の設備投資を計画している。その中には、PrecisionCoreの生産能力強化に向けて、長野県塩尻市の広丘事業所におけるPrecisionCoreへの新規生産設備投資、フィリピンやインドネシア工場の生産能力増強、秋田エプソンへの投資などが含まれる。

 「2100億円のうち700億円規模がPrecisionCore関連。残りの1400億円は製品化に関わる部分。金型づくりへの投資や省人化活動、総原価低減活動を推進することで、コストダウンや効率化に継続的に取り組むことに加え、将来に向けた生産拠点の整備に取り組むことになる」

 これまでは事業レベルで独自に展開していたオペレーションや情報通信基盤の仕組みも、全社レベルで統合する計画を含むほか、協業やM&Aなども視野に入れる形で、成長実現のスピードアップを図った施策を検討していくという。

 成長に向けた投資としては、設備投資費用のほかに、研究開発費用として3年間で1533億円、M&Aで25億円の計画している。

 Epson 25のビジョンに基づき、製品開発の仕込み、必要な投資を積極的に進め、強固な基盤を整備するというのがEpson 25第1期中期経営計画の基本姿勢。碓井氏は、「この3年間で成長に向けた基盤を作り上げることが、第2期以降での売上収益の成長加速や収益性の向上を実現させる。その重要な第一歩になると考えている」とする。そして、第2期中期経営計画では「成果を出した利益成長」、第3期中期経営計画では「高収益体質の確立」を掲げる。

 SE15で体質転換を図り、生まれ変わったセイコーエプソンは、長期ビジョンのEpson 25とEpson 25第1期中期経営計画によって、強い体質へと進化する一方、独自の技術にこだわり続け、垂直統合型ヒジネスモデルによって、成長戦略を描こうとしている。水平分業型の成長モデルを描く企業が多い中、セイコーエプソンは、この取り組みこそが、同社にとっての「勝利の方程式」だと考えているのは間違いない。

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