ドイツのSAPと米Microsoftが長年の提携関係を拡大し、新しい協業を発表した。HANAのテスト、運用環境のワークロードを動かす基盤としてMicrosoftのパブリッククラウド「Microsoft Azure」を認定する。
また、「Office 365」とSAPのSaaSアプリケーションの統合も進める。発表の場となったSAPの年次イベント「SAPPHIRE NOW 2016」では、両社の最高経営責任者(CEO)が登場し、デジタルトランスフォーメーション、技術業界の競合などについて語った。

SAPのBill McDermott氏とMicrosoftのSatya Nadella氏(右)
SAP S4/HANAの運用環境としてAWSに続きAzureを認定
SAPの創業は1972年、Microsoftは1975年と、ともに激しい技術業界を40年以上生き延びてきた関係だ。この間、MicrosoftとSAPはOfficeとSAPの連携を可能にする「Duet」など、多数の取り組みを進めてきた。最新の提携は、クラウド時代に合わせたものとなる。Nadella氏は、「ITとOT(Operational Technology:工場の制御機器など)の距離が縮まっており、ここで2社が深いレベルで統合することで顧客のビジネスを加速できる」と形容した。
1つ目として、SAPはSAP HANAおよびSAP S/4 HANAを動かすクラウド環境としてAzureを認定する。これによりSAPはAWSに続く新しいクラウドディストリビューションを獲得し、MicrosoftはSAP顧客にアピールできる。
Nadella氏は中国とドイツにデータセンターがあることを強調しながら、次のように語った。「Azureはハイパースケールのクラウドであり、これとSAPのすぐれた技術が組み合わせることで顧客に素晴らしい環境を提供できる。さらには、われわれは中国でもドイツでもインスタンスを動かしており、グローバルに展開する企業を支援できる」。
なお、奇遇にもAWSも発表当日、AWSのパブリッククラウドがSAPの土台になっているというプレスリリースを出している。「AWS Cloudは世界でもっとも包括的な業務アプリケーション向けのクラウドプラットフォームであり、事実上すべての業界とすべての地域のAWS顧客がSAPアプリケーションをAWS Cloudで動かし、アジリティ、拡張性、セキュリティ、コスト削減を実現している」と同社。
顧客事例として、General ElectricのGE Oil&Gasが「SAP Hybris」「SAP BI」などのSAPのアプリケーションをAWS上で動かし、TCOを52%削減したと報告している。

sportbasement
2つ目は「Office 365」だ。Microsoftのクラウド版Officeで、これにSuccessFactors、ConcurなどのSAPのSaaSアプリケーションを統合する。
デモではS4/HANAをAzure上で動かす顧客例として、サンフランシスコを拠点とする小売業のSports Basementを紹介した。SAP技術を使うことでIT専任スタッフなしに、店舗内で商品をスキャンして価格比較ができるアプリを提供したり、顧客のウェブ上の行動分析や予測機能を使ったレコメンデーションを表示するなどのことを実現しているという。
Office 365とSAPアプリケーションの統合では、SuccessFactorsで休暇申請をすると、Outlookのカレンダーがミーティングのリスケジュールなどを提案、申請が承認されるとカレンダー側にも反映されるという様子をデモした。
2社によると、Officeとの統合は今後、SAPの多数のアプリケーションにも拡大していくという。
Nadella氏は上記2つに加えて、Microsoftのクラウドベースの管理基盤「Intune」でSAP Fioriアプリ向けの管理とセキュリティを提供することも明らかにしている。