NECは6月2日、CPUとFPGAを広帯域な伝送路でつないだプロセッサ(密結合プロセッサ)において、CPUとFPGA間の高速通信を実現する「異デバイス共通通信方式」を開発したと発表した。
IntelのCPU-FPGAを密結合した試作機を用いて本方式の有効性を評価した結果、本方式とNECの半導体設計ツール「CyberWorkBench」(FPGA設計向けC言語ベース高位合成ツールで、ソフトウェアプログラムからハードウェア記述を合成でき、ASICやFPGAの設計スキルをもたない技術者でも短期間でハードウェア開発が可能)を併用することで、CPU-FPGA密結合プロセッサ上でのIoT(モノのインターネット)の高精度な分析処理の高速化に必要な設計時間を約50分の1に短縮できたという。
IoTの進展により、センサや機器からの大量のデータを高精度に分析処理するクラウドコンピューティング基盤が求められており、そのクラウドで利用する高性能サーバを実現するためにCPUとFPGAを密結合した高性能なプロセッサが検討されている。それぞれ特徴が異なるCPUとFPGAを組み合わせることで、サーバの高速化および低電力化の実現が期待できる。
このうちFPGAの設計には、専用ハードウェアの設計スキルと長い開発期間が必要だったが、NECはCyberWorkBenchにより短期間での開発を実現している。しかし、CPU-FPGAの密結合プロセッサでは、CPUとFPGA間の通信速度が性能に大きく影響するため、プロセッサの持つ高い通信性能を引き出すべくCPU上のソフトウェアとFPGA上のハードウェアを開発する必要があり、開発が長期化しがちになるという課題があった。
この課題に対しNECは今回、CPUとFPGAという異なる種類のコンピューティングデバイスを密結合したプロセッサ向けの「異デバイス共通通信方式」を開発。これにより、さまざまな処理に対し、ソフトウェアの改変を不要にしつつ、CPU-FPGA間通信の高速化を可能にした。
新技術の特徴は以下の通り。
ソフトウェアの改変を不要にする通信方式により、開発期間の短縮を実現
FPGAがCPU上のデータにアクセスできるという密結合プロセッサの特徴を生かした通信方式を開発。FPGAがCPU上のデータを直接読み書きすることにより、これまでFPGAを利用する際に必要であったCPU上のソフトウェアの改変を不要とした。
データ通信単位の最適化により、さまざまなアプリに対する高速化を実現
FPGAがCPU上のデータをまとめて読み込むことで、密結合プロセッサにおけるCPUとFPGA間の広帯域な伝送路を活かす技術を開発。また、処理により異なる通信データサイズと要求性能に柔軟に対応してデータの通信単位を調整することで、さまざまなアプリケーションに対して高速化を可能にした。これにより、処理にあわせて性能チューニングする手間を大幅に短縮できるようになった。