AR活用の秘訣は「ステップバイステップ」の導入
「ARはマーケティングツールとして活用できる」と語るのは、フィンランドの通信大手ElisaでIoT担当バイスプレジデントを務めるMarkku Hollstrom氏だ。「レストラン向けにコーヒーメーカーを販売する会社は、同製品の操作マニュアルをARコンテンツで作成し、タブレットで見られるようにした。これにより、操作ミスによるコーヒーの無駄を削減できた」と、すでにARが成果を上げていると語る。
フィンランドの通信大手ElisaでIoT担当バイスプレジデントを務めるMarkku Hollstrom氏
コンプレッサなどを提供する米Ingersoll Randでエンジニアリング IT担当ディレクターを務めるDominic Hand氏は、自社の経験から「遠隔にある機器のモニタリングやトラブルシューティングに有効だ」と説明する。特定機種のメンテナンスには、専門知識が必要になる場合も多い。熟練工にARコンテンツは必要ないかもしれないが、現場には管理画面のコントロールパネルを理解できない担当者もいる。そのような状況においては、視覚的に分かりやすいARコンテンツは役に立つという。
2007年、Ingersoll RandではARコンテンツの作成を試みたものの、「時間とコストがかかりすぎた」(Hand氏)ため、その開発を断念した経験がある。「ARは3Dコンテンツをシンプルに可視化し、その拡張性は無限大だ。(Vuforia Studio Enterpriseの登場で)ようやくAR活用の機が熟したという印象だ」と述べた。
米Ingersoll Randでエンジニアリング IT担当ディレクターを務めるDominic Hand氏
また、Hand氏は、「ARはビジネスアプリケーションとして組み込むことが重要だ」と説く。例えば、製造現場で利用しているアプリケーションのカスタムユニットとして活用することで、既存の作業をより効率化するといった使い方だ。
Campbell氏も「3Dコンテンツを簡単に可視化できるメリットは、(既存作業の)効率化とスピード化だ」と指摘。ARの普及が期待される業種・業界については、製造業、船舶、工場のオペレーション、都市のインフラなどを挙げた。