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保険そのものがITという時代がやって来る--東京海上日動の先進性 - (page 2)

怒賀新也 (編集部)

2016-06-16 07:30

「海外に技術者はいない」

 業界最大手のイメージとは少し異なり、積極的なIT化を展開する同社。リードする宇野氏は「人材育成が最も重要。ITはこれをしないと意味がない」と言い切る。

 特に、ビジネスプロセスを設計できる人材を育てることに注力しているという。というのも「保険のビジネスプロセスを設計できる人材は海外にはいない」からだ。

 「米国のCIO(最高情報責任者)はおおむね3年で辞める。たいてい次の行先は保険業界ではない。インドの技術者も同じ。次を見据えた時、保険のビジネスプロセスを極めようとはしない」(同)

 「われわれは違う。保険という業務プロセスの質を高めることに注力していく」と意気込みを隠さない。

 1977年に東京海上火災保険に入社した宇野氏。95年までシステム部、96年からは経営企画部に3年、営業企画部に3年、その後、東京海上あんしん生命と日動生命の経営統合に、システム、事務面からかかわる部長を4年間経験した。

 2013年から現職になるまで、システムが19年、システム以外が17年と、ITとビジネスのキャリアが半分半分。一般社団法人 日本情報システム・ユーザー協会(JUAS)の企画委員会に在籍する30人のCIOの中でも珍しい方。全体の3分の2は常務になってからITにかかわっており、3分の1はITだけしか経験していないとのこと。

社内で定義する7つのキャリアモデル
社内で定義する7つのキャリアモデル

 地域ごとの市場の非均一性などを鑑みると、保険業界ではビジネスとITの両方の経験が、指揮を執る上で不可欠とも言える。

 積極的なIT化を進めるベースとなる、東京・多摩地区にあるオフィス環境にも、既にさまざまな仕掛けを施している。

 ペーパーレス化、ウェブ会議環境の充実など、着々と質的な向上を続けている。往復2時間かかる丸の内本社への移動も30%減った。「場所にとらわれない働き方を意識している」と宇野氏。

 少子高齢化、海外への事業展開の要請といった外部事業環境の変化に対応する上で、同社のITへの取り組みは、それぞれが将来の競争力につながっているように見える。業種を問わず、日本の他企業にとって参考になる取り組みとの印象だ。

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