Googleやリクルートが取り組む理由--量子アニーリング理論の可能性(3) - (page 3)

吉澤亨史 山田竜司 (編集部) 2016年09月09日 07時00分

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 新しいコンピュータが出てくる未来は見えているわけですから、それに特化した機械語を理解しておくという段階。今は量子アニーリングが実社会において、何に使えるのかを探索するフェーズです。とは言っても、とても難しいです。「こういう問題の解決に使えるかも知れない」と着想できることは、実はすごいことなのです。

 私や大関さんのような研究者は物理学を学び、理論物理学の研究を進めて今に至るので、学術会におけるいわゆる教科書的な組み合わせ最適化問題の例や、それを量子アニーリングに実装する方法は知っています。しかし大切なのは、実社会における膨大な情報処理の中に、「どこに組み合わせ最適化問題があるか」を見つけることです。

 しかし、コンピュータの発達がある意味人々の考えを阻害していて、現状で問題ないと考えている人、問題があること自体に気付いていない人が多いのではないかと考えます。今まさに実問題の探索フェーズなのですが、問題があること自体に気づける人が、進化したアニーリングマシンをいち早く使いこなし、価値を創出できるのだと思います。

大関氏 組合せ最適化問題が解けると、人生のストレスを感じる場面に貢献すると思います。たとえばアルバイトのシフト作成はすごくストレスが溜まります。この曜日のこの時間帯は誰と誰が出れない、普段は出れないけどこの週だけは出れる。そのためのソフトもありますが、最終的には人の手でシフトを組んでいます。メディアにおいても、こんな記事を読んだ人にはこの記事がお勧め、と出ます。あれはアルゴリズムで、読者が本当にお勧めの記事を読んでいるのかを調べる必要があります。

 調査の結果、記事が読まれていないとなれば、それはよくないアルゴリズムだから次を試すことになります。広告の配置もそうですし、記事そのものの配置、新聞の紙面の配置もそうです。その配置の最適化を、今までは人がやってきたわけです。それを機械にやらせるか、人間がそのままやるのかどちらが効果が高いかということを考えればいいわけです。

田中氏 ちょうどメディアの話になったので関連してお話しすると、新聞は形が決まっていますよね。でもベストな形は時代の流れによって変わっていると思います。今はパーソナライズされたキュレーションアプリが流行っています。あれはまさに典型ですよね。どういうニュースをこの読者は見たがるのか。

 つまり、それぞれの人に応じたサービスを提供できる。ですから、量子アニーリングを用いたより良いマッチングサービスがメディア業界からも出てくるかもしれません。また、スポーツやエンタメ、教育の領域にも当然マッチングのニーズはあります。

大関氏 教科書の文章の配置や教え方も、今は文部科学省を始め、教育に関係する人たちが決めています。でも、本当にそれで良いのかを問い直すチャンスがあったら、量子アニーリングでやる時代がきてもおかしくないわけです。教育プランやマネープランもそうです。自分の人生計画や会社の経営計画なども組み合わせ最適化の問題です。

 人工知能と言っている多くのサービスも最適化問題で出ている結果を見せているに過ぎない場合もあります。逆に言えば、それだけ広範な適用範囲を持つのだから、そのための専用マシンやできる工夫に集中的に投資や挑戦を続けることは価値があると思います。


京都大学大学院情報学研究科システム科学専攻助教、大関真之氏(右) 早稲田大学高等研究所助教 田中宗氏(左)

<第4回に続く>

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