前回の本コラム「デジタル化で変わるITベンダーとの関係」では、デジタル・イノベーション創出のためには、ITベンダーと新しい枠組みでの協調関係が必要となると述べました。今回は、その具体的な取組みやアプローチを紹介します。
イノベーション創出の各段階で求められる協調関係
ビジネスIT領域でのシステム構築やデジタルビジネスの創出といった分野では、実際にビジネスをドライブする事業部門や新規事業を企画する部門と、先進的なIT技術を取り扱うITベンダーの専門性をいかに融合させるかが成功の鍵となります。しかも、アイデアと実装(プロトタイプを含む)を短いサイクルで回し、概念検証(PoC:Proof of Concept)を行いながらビジネス変革や事業化を実現していくことが求められます。
ITベンダーとの関係性という点においては、イノベーションのアイデアを創出する段階から、企画・開発・運営に至る全ての段階において、これまでにない新たな取り組みが試みられていくことでしょう(図1)。
(図1)各段階での新たなベンダーとの協調関係への取り組み
実際に、いくつかのITベンダーが、これらをプログラム化してイノベーション支援に名乗りを上げています。それでは、これらの段階ごとの取り組み事例や考え方を見ていきましょう。
イノベーションの創出支援
これまでインキュベーション・プログラムは、ベンチャーキャピタルなどによるスタートアップ企業を対象としたものが一般的でした。昨今では、ITベンダーが新たな顧客層の開拓に向けて取り組みを強化しています。日本IBMは、サムライインキュベートと共同で、戦略・マーケティング支援、ビッグデータの分析や活用方法、外部メンターによる経営戦略支援などを提供するIBM BlueHubインキュベーション・プログラムを提供しています。
富士通は、同社のクラウド基盤を活用した「MetaArc Venture Community」などいくつかのプログラムを展開し、積極的にオープン・イノベーションを推進しています。伊藤忠テクノソリューションズは、クラウドとアジャイル開発を組み合わせたDevOps手法を体系化し、アイデア創出からクラウド導入、アプリケーションの開発・継続的改善までを一貫して支援するCTC Agilemixを提供しています。
また、こうしたインキュベーション・プログラムの一環として、または個別のプログラムとしてアイデアソン/ハッカソンの開催、プロトタイピングやPoCを支援する動きもあります。今後は、スタートアップ企業だけでなく、既存企業における新規事業創出や社内ベンチャーなどへの支援も強化されていくと考えられます。