座談会@ZDNet

日本企業による海外展開の実情--ITベンダー座談会

吉澤亨史 怒賀新也 (編集部) 2016年07月27日 07時00分

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 日本で進む少子高齢化などの環境変化を背景に、製造業だけでなく、国内の企業が海外へ向かう傾向が年を追うごとに強まってきている。一方で、グローバル化の対象となる中国やインド、東南アジア、アフリカなど各国の状況も、日に日に変化している。

 そこで、企業のグローバル展開に関わるIT企業4社を集め、日本の企業が海外に出て行く理由や直面している問題点をテーマに、座談会を開催した。

 日本オラクル常務執行役員 クラウド・アプリケーション事業統括 ERP/EPM クラウド統括本部長の桐生卓氏、インターネットイニシアティブ(IIJ)グローバル事業本部 グローバル企画部 サービスソリューション課長の大導寺牧子氏、NTTコミュニケーションズ ICTコンサルティング本部 本部長の岩野英一氏、日本アイ・ビー・エムのグローバル・ビジネス・サービス事業、戦略コンサルティング・サービスアソシエイト パートナー、門脇直樹氏の4人だ。

(左奥)日本オラクル常務執行役員 クラウド・アプリケーション事業統括 ERP/EPM クラウド統括本部長の桐生卓氏、(左手前)インターネットイニシアティブグローバル事業本部 グローバル企画部 副部長の大導寺牧子氏、(右手前)NTTコミュニケーションズ ICTコンサルティング本部 本部長の岩野英一氏、(右奥)日本アイ・ビー・エムのグローバル・ビジネス・サービス事業、戦略コンサルティング・サービスアソシエイト パートナー、門脇直樹氏。
(左奥)日本オラクル常務執行役員 クラウド・アプリケーション事業統括 ERP/EPM クラウド統括本部長の桐生卓氏、(左手前)インターネットイニシアティブグローバル事業本部 グローバル企画部 副部長の大導寺牧子氏、(右手前)NTTコミュニケーションズ ICTコンサルティング本部 本部長の岩野英一氏、(右奥)日本アイ・ビー・エムのグローバル・ビジネス・サービス事業、戦略コンサルティング・サービスアソシエイト パートナー、門脇直樹氏。

ZDNetまずは皆さまの立場と、日本企業のグローバル展開、サポートにおける考えを教えてください。(文中、一部敬称略)

桐生(オラクル) 日本オラクルの桐生です。よろしくお願いします。私はオラクルでERPの業務、基幹業務統合パッケージの責任者をしています。

 グローバル展開に絡めていくと、「海外に新しくグループ会社を展開するのでERPを導入したい」という話や「M&AしたのでERPを統合したい」という相談も多くなっています。一方で、企業を売却するケースや「ラオスに出店するけどERPに対応しているのか」といった話もあります。そういう形で、日本企業が海外進出するときの下支えの部分で事業を展開しています。

大導寺(IIJ) IIJの大導寺と申します。私はグローバル事業本部という、IIJの中でグローバルビジネスを手掛けている事業本部で企画を担当しています。企画の中身としては、グローバルに展開するサービスの企画で、主にクラウドをグローバルに展開したり、IIJが日本で提供しているセキュリティ系のサービスを海外でも展開するといったことになります。

日本オラクル常務執行役員 クラウド・アプリケーション事業統括 ERP/EPM クラウド統括本部長の桐生卓氏
日本オラクル常務執行役員 クラウド・アプリケーション事業統括 ERP/EPM クラウド統括本部長の桐生卓氏

 もう1つ、企画部にはプロモーションの役割もあります。今日は企画の方、サービスを展開する立場で話をしたいと思っています。IIJは拠点数は少ないですが、2012年ごろから海外拠点を増やして、主要な拠点で日本の企業、海外進出する企業を支援していますが、柱としてはインターネットのアクセスサービスを提供することと、クラウドサービスを提供することです。

 現地ではインフラといいますか、クラウドだけ、IaaSだけということにはなかなかいかないので、その上に載るアプリケーションを開発することもありますし、システムインテグレーションを実施することもあります。不動産探し、事業所移転の支援を含めて「IT」全般を担当しています。

岩野(NTT Com)不動産もITに分類されるんですね。

大導寺(IIJ) 移転などの際、(PCやネットワーク設定のために)IT担当者が先に準備する必要がある際は、ビル選びからコンサルティングすることもあります。

岩野(NTT Com)NTTコミュニケーション(NTT Com)の岩野と申します。私は名刺の肩書きが「ICTコンサルティング本部」となっています。3~4年前、それまでのようにデータセンターやネットワーク単品で勝負するのは時代遅れとの認識を背景に、NTT Comもクラウドを展開することになりました。

 とはいえ、クラウド事業を開始したからと言ってすぐに顧客が集まるわけではなく、販売担当者、顧客のクラウドの活用法を複合的に提案するチームが必要ということで作られた部署です。

 現在、日本から海外に進出する顧客を中心に、クラウドの活用事例をつくろうとしています。私自身はリーマンショック後くらいから、海外でサービスを展開してきました。当時は円が非常に強くなってしまい、競争力の弱体化が懸念されたことから、海外展開を積極的に進めようとする状況でした。

 最近は、アジアの需要が一巡してきました。セキュリティ絡みや、現地で過渡的に導入したシステムをERPに載せかえようといった話が出ています。

 フットプリントとして、欧米企業をM&Aすることもあります。買収したが現地での対応方法が分からないといった顧客を、グローバルで支援するイメージです。

門脇 IBMの門脇です。IBMのグローバルビジネスサービスの戦略コンサルティングサービスに所属しています。ITというよりビジネスの観点で、企業の海外展開を支援しています。

 最近ですと、4~5年前はBRICs(Brazil、Russia、India and China)ということでブラジル、ロシア、インド、中国とずっと回っていて、一年のうち半年くらいは海外にいるような生活をしていました。でも、最近では、欧米にもう一度投資をしようという動きになってきており、そちらの案件が非常に増えています。

 やはり、BRICsにも多少バブルの要素があったと感じます。BRICsブームを含め、いろいろな仕掛人がいます。日本企業がうまく乗れればいいのですが、必ずしも成功していないのが実情です。

インターネットイニシアティブグローバル事業本部 グローバル企画部 サービスソリューション課長の大導寺牧子氏
インターネットイニシアティブグローバル事業本部 グローバル企画部 サービスソリューション課長の大導寺牧子氏

大導寺(IIJ) IIJとしては、中国をまだ期待できる進出先としてとらえています。製造系やエンターテインメント系など、既に進出している企業について行くことが多いです。情報システムでは、日本の小さなIT企業が日本にいながら対応しているパターンが多く、当初のシステムを改めて見直す動きが活発化しています。

中国市場の現在

ZDNet 中国の経済に陰りが見えてきているという指摘があります。

大導寺(IIJ) 中国については、2つの傾向があります。1つは、製造業系は海外に出る勢いがなくなっていますが、現地化に当たってガバナンスを効かせるためにITを導入する動きがあること。エンターテインメント系ではまだまだ中国を有望な市場ととらえて進出する傾向にあります。経済の減速を指摘されていますが、あまり実感はありません。

ZDNet 日本市場と比較すると中国市場はどうですか。

大導寺(IIJ) 相対的にですが、日本より中国の方が伸びています。

岩野(NTT Com) 中国市場が減速傾向にあるのは事実ですが、日本よりはずっと伸びています。また、インドも7%前後のペースで伸びています。日本企業が海外進出する理由は、特に製造業はよく指摘される通り、最初は賃金の低さでした。

 その後、現地での需要を取り込むための進出という流れに変わりました。製造業であれば、中国で製造して中国で売るというケースです。送金などの関係で銀行と一緒に進出する例も目立ちました。

 次は、資源が求められるようになり、そうするとオーストラリアなどの資源国が対象になっていきます。中国は賃金が上がり過ぎてしまい、製造の拠点にはなりにくくなっています。

ZDNet 日本の人口減少への懸念が海外展開の発端になっているとの指摘がありますが、実際のところはどうでしょうか。

日本アイ・ビー・エムのグローバル・ビジネス・サービス事業、戦略コンサルティング・サービスアソシエイト パートナー、門脇直樹氏
日本アイ・ビー・エムのグローバル・ビジネス・サービス事業、戦略コンサルティング・サービスアソシエイト パートナー、門脇直樹氏

桐生(オラクル) 私は、人口減少への懸念というのはあまり感じていません。新しい商材を売るための市場がたまたま海外だったという受け止め方をしています。実際に、海外市場は拡大していると思います。最近、日本企業の顧客が海外を飛び回っている感覚があります。

門脇 私はその問い自体に違和感を持っています。私はIBM全社の変革ということでニューヨークに一年間おり、全世界の営業担当者の給与を決めるという役割を担っていました。その際、日本は既に世界の土俵の上にいるのが当然という認識があり、日本から出るとか出ないといった議論をすることに意味があるとは思えません。

大導寺(IIJ) 1つの考え方は、日本企業もしくは自分たちが持っている価値が、世界市場でどれくらい優位性を持っているかにあるかです。優位性がある商材であれば海外でも売れるので、そこに市場を見出せると思います。IIJで言えば、インターネット関連技術を海外に持っていこうとしたとき、欧米は既に進んでしまっています。そのため、まだ進んでいないASEAN地域やアフリカなどが主なターゲットになってきます。

岩野(NTT Com) NTT Comも、数年前にグローバルシームレスサービス「GSS」を決めました。サービス提供先である企業が海外に出たときにも対応できるよう、サービスをグローバル化するものです。通信企業であるNTTでさえそうなのですから、製造業や外資系企業にとっては当たり前のことかもしれません。日本市場には人口が1億2000万人という制約がありますので。

岩野(NTT Com) 少なくともASEANまでは日本の経済圏として、1つに見ています。

大導寺(IIJ) 次に、インド、アフリカ、ブラジルでどうするかといった話にもなります。岩野さんもおっしゃっていましたが、今は「進出したものの、混乱してしまった状況をどう立て直すか」というステージです。

岩野(NTT Com) われわれですと、各国である程度の回線ライセンスを取得しています。そうすると今度は、顧客が、販社網を整理するフェーズに入っています。それも、海外の中心国というのはほぼ終わり、次にインド、インドネシアといった国への取り組みを強化しようとする状況です。

桐生(オラクル)氏 欧米は結構引き合いが強いです。先ほどのスクラップ&ビルドではありませんが、作ってはみたものの業務が見えないとか、現地法人側で勝手にデータをいじってしまうのでもう少し日本で管理したいとか、ガバナンスを効かせたいといった話がたくさん出てきていて、特に東南アジアが多いうわけではありません。

ZDNet 混乱した状況とは具体的に?

岩野(NTT Com) 国によっていろいろ事情はあると思いますが、個別最適と全体最適のどこに折り合いをつけるかには苦労します。現地には、土地ならではの方法やコスト削減策があります。一方で、本社としては、情報を共有した方が管理しやすいし、低コストで済むと考えます。

 製造拠点であればある程度本社の言うことは聞いてくれるのですが、成績の良い販売拠点などでは「俺が利益を持ってるのだから、好きにさせろ」といわれることもあります(笑)。そこで止まってしまうことがよくあります。

 国によっては「バックマージン」の問題や、特異な法規制の話もありますが、それはまた別の話です。

大導寺(IIJ) 現地にIT専任の担当者を置ける企業はあまり多くありません。何年も前のシステム構成図が出てきたり、障害が起きて初めて分かる仕様があったりします。現在の状況をつかめていないことが多いと感じます。

岩野(NTT Com)どちらかというと、アジア系企業にそうした例が多い印象です。

大導寺(IIJ) はい。人の入れ替わりが激しく、引き継いだ人がすぐに辞めてしまったりすることで、結局ある1人が全部一人で担当するブラックボックスになってしまっているようなケースです。その人がいなくなったらシステムに関する事情がまったく分からなくなるといったことはよくあります。

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