共通データモデルは、営業や購買、顧客サービス、生産性といった、業界で一般的なエンティティのデータベースを提供するためのものだ。これらのエンティティはMicrosoft自身のビジネスアプリケーションに接続されるとともに、サードパーティーや顧客が開発したアプリケーションにも接続されることになる。共通データモデルのエンティティは、住所や電子メール、通貨、請求書、注文の自動採番、画像、地理情報といったデータ型をサポートし、最新の「Microsoft SQL Server」のデータ型を用いて実装される。
MicrosoftがOffice 365の屋台骨と呼んだ「Microsoft Graph」には、同種のエンティティメタデータがいくつか含まれている。そして共通データモデルにより、「Excel」を用いたエンティティの大規模な編集や分析を行うためのアドインがExcelユーザーに提供される。
共通データモデルは、ERP向けやCRM向けにMicrosoftが現在提供している、「XRM」や「Microsoft Dynamics CRM」フレームワークといった拡張ツールや開発ツールを置き換えるものではない。むしろ、「Microsoft Azure」上で稼働する「Microsoft Dynamics AX」や、「Microsoft Dynamics CRM Online」、「Project Madeira」(財務向けのDynamics 365)といった、Dynamics 365の中核コンポーネントを横断して機能する新たなフレームワークという位置付けになっている。
MicrosoftのテクニカルフェローであるMike Ehrenberg氏はMSDynamicsWorld.comに対して、「共通データモデルは時とともに、自らでPowerAppsを構築したいと考えるビジネスユーザーだけでなく、複数の中核システムにまたがったビジネスアプリを構築したいと考える独立系ソフトウェアベンダー(ISV)もサポートしていくことになるだろう」と語っている。
Ehrenberg氏や同社の幹部らは、共通データモデルやDynamics 365が「『Project Green』のやり直し」ではないという考えを打ち消そうとしている。Project Greenは10年以上前にさかのぼるイニシアティブであり、同社が無数に抱えているERP製品を1つにまとめようとするものだった。同プロジェクトはその後、Dynamicsスイートとして提供されている製品群を横断するかたちで、同社のERP製品とCRM製品がより一般的なテクノロジとアプローチを共有することを目指すように方針を転換した。
MSDynamicsWorld.comによると、MicrosoftはDynamics 365の一般提供開始を10月に予定しているという。筆者の予想では、このタイミングで提供されるDynamics 365は基本的に、財務向けのProject Madeiraになるはずだ。
この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。