矢野経済研究所は8月5日、国内のクラウド基盤(IaaS/PaaS)サービス市場に関する調査結果を発表した。2015年のクラウド基盤サービス市場は、2014年比39.1%増の1260億円と大きく拡大しているという。
「クラウド基盤」とは、サービス提供事業者のクラウド基盤であるパブリッククラウドを利用し、ネット経由で提供される仮想化技術、自動化技術などを施したクラウドコンピューティング環境を指す。
クラウド基盤(IaaS/PaaS)サービス市場規模推移と予測
2015年の市場規模拡大の背景について、エンタープライズ分野での利用増加や複数のクラウドを使い分けるハイブリッドクラウドやマルチクラウドの拡大、情報のデジタル化進展、PaaSの利用拡大などにより、クラウド基盤サービスの活用範囲が大きく広がったことを挙げている。
また、クラウド基盤サービスの活用が本格的な普及期に入り、クラウドエコシステム構築も第二段階へ進んだとしている。クラウド基盤サービス提供事業者には、新規顧客の獲得だけでなく、既存顧客の利用量拡大、顧客との長期にわたる関係構築などが求められるようになったと説明。できるだけ多くのパートナー企業のクラウド向けサービスを自社のクラウドエコシステムに取り込んでおくことが必要となってきたと指摘している。
そのためクラウド基盤サービス提供事業者は、パートナーになりやすい環境や、パートナー同士が連携しやすい仕組みをつくることで、クラウドエコシステムの拡大を図っているという。
なお、ユーザー企業ではハイブリッドクラウドやマルチクラウドを利用してビジネスを強化する動きが活発化しているが、一方では情報システム部門の運用負荷の増加にもつながっている。こうした運用負荷の軽減や最適化のために、複雑化したクラウド環境を統合管理するマネージドクラウドサービスを提供する事業者が増加基調にあるとした。今後は、クラウド基盤サービス市場の成長とともに、クラウド支援サービス市場も拡大していくと同社は予測している。
さらに、近年注目されているIoTに関しても、クラウド基盤サービスを活用すれば高い技術力や資本力を持たなくてもIoTビジネスに取り組みやすいことから、中堅中規模のユーザー企業の中にも、クラウド基盤サービス提供事業者が提供するIoT基盤を中心としたPaaSを利用し、IoTビジネスに積極的に取り組む企業が出始めていると説明。そうした動きにも後押しされ、当該市場は高成長を維持し、2019年のクラウド基盤サービス市場規模は事業者売上高ベースで3500億円に達すると同社では予測している。
調査はこの5月から7月メールや電話、対面などで実施、事業者売上高ベースで市場規模を算出した。