最高情報責任者(CIO)が今後1年に最優先すべきは、オフィスやデータセンターから外に出る頻度を増やして、顧客をもっと知ることだ。CIOはシステムを問題なく運用するだけではなく、顧客の要求に応える必要がある。
これが、Deloitteが世界の1217人のCIOを対象に実施した、今後成功するための要素として、CIOが何を重視しているかを調べた調査の結果だ。調査では、ビジネスの優先事項が「事業の業績」から「顧客」に移りつつあることが明らかになった。2015年の調査では、顧客を最優先事項として挙げたCIOは45%だったのに対し、今回は57%に増加した。また調査で対象とされた10の業界のうち、8つの業界で優先順位が高い項目として顧客が挙げられている。
ところが多くのIT部門は、最終顧客やCIOの要求に応じるための備えができていないようだ。IT部門がIT活用能力を通じて、顧客体験の提供に関与していると回答したCIOは45%にすぎない。さらに、自社のIT部門がデジタル関連のスキルセットの面で「平均以下」だと感じている回答者は28%にすぎなかった。
同レポートの著者であるStephen Mercer氏とMark Lillie氏は、会社の期待とIT部門の能力の間に、大きなギャップが存在していると説明している。CIOの多く(57%)は、会社はIT部門に対して「ビジネスのイノベーションや新たな製品やサービスの開発の支援」を求めている一方で、それに近い数の回答者が、現時点ではIT部門にイノベーションや破壊を優先する体制は存在しないか、その体制が構築される途上にあると答えている。
つまり、CIOやITリーダーが2017年に成功するためにもっとも重要な資質の1つは、顧客を知る能力だと言える。以下に挙げるのは、破壊的でパラダイムを打ち砕くような年になると考えられる中、ITリーダーが成功するために必要になると考えるさらなる5つの資質だ。
事業部門と戦略的に深く協調する能力。Mercer氏とLillie氏は、「圧倒的に多くの回答者が、重要なIT活用能力として、事業戦略や業績目標に合った形でIT部門の活動を進める能力を選択した。CIOの4人に3人が、成功にはこの能力が不可欠だと述べた」としている。同氏らはさらに、重要なのはビジネス上の課題に自ら積極的に取り組む姿勢であり、「単にビジネスの要求に対応することだけではない」と付け加えている。また調査結果によれば、自社のIT部門がこの役割を果たす能力を備えていると感じているCIOは5%にすぎないという。
堅実かつ信頼できる形で結果を出す能力。半分以上のCIO(56%)が、「実行力」を重要なIT活用能力として挙げている。もちろんこれは、単にソフトウェアを提供することではなく、高品質で安全なソリューションを、予算の範囲内で提供することを意味している。問題は、現段階で「プロジェクトの実行およびソリューション提供の核となるIT活用能力を、実際に構築する過程にある」ことを認めているCIOが21%にすぎないことだ。
ビジョンと戦略を実現する能力。Mercer氏とLillie氏によれば、CIOの50%近くが「ビジョンと戦略を策定する」ことが必要不可欠な能力だと述べている一方で、そのIT活用能力が現在自社に備わっていないと答えた回答者が3分の1もいる。IT部門には日常的な問題解決以上のことを考える視野が必要であり、デジタルエコノミーの中で事業を前進させるためのビジョンを(しかも、競合他社よりも先に)策定する能力を持っている必要がある。