英国の大手建材業者であるTravis Perkinsの最高情報責任者(CIO)Neil Pearce氏は、同社のデジタル変革プログラムを進めている。この取り組みには、レガシーシステムをデジタルサービスに移行する作業も含まれている。
この変革では、顧客サービスの品質を高めるために、ビッグデータから自然言語処理まで、あらゆるテクノロジが利用される。Pearce氏は、変革が同社が抱える有名ブランド(「Tile Giant」「Toolstation」「City Plumbing Suppliers」を含む)のビジネスに与える潜在的なメリットは大きいと述べている。
しかしその潜在的メリットは、Pearce氏が社内ITチームの能力をフルに引き出すことができて、初めて実現するものだという。この記事では、IT組織の中で優れた職場文化を作るために同氏が実践している、5つのベストプラクティスを紹介する。
1.明確な方向性を定める
Pearce氏によれば、正しい職場文化を育もうとするCIOは、何よりもまず、テクノロジ部門の目標を定める必要がある。同氏はIT部門のリーダーチームが進めた作業について語る上で、「まずミッションとゴールを明確にした」と述べ、「その理想を守り通すことが大切だ」と強調した。
Pearce氏はデジタル変革の計画をスタッフに説明する際、建築プロジェクトの例えを使っている。同氏はこのアナロジーを組み立て、デジタル変革の方向性を明確化する作業を、組織内と組織外の多くの人が手伝ってくれたと述べている。
建築プロジェクトの例えを使えば、現在Pearce氏のチームは建物の「基礎」に取り組んでいるところであり、これにはネットワーク、クラウドコンピューティング、ミドルウェアなどが含まれる。今後は壁(ビジネスアプリケーション)や屋根(ITチーム)、家具や什器(顧客に提供する革新的なデジタルサービス)に取り組む予定だという。
Pearce氏は、「ゴールがぶれないようにするのは簡単ではない。自分たちの仕事が何のためのものかを理解してもらうには、かなり時間がかかった。しかし、組織内の全員と会話できるように、正しいコミュニケーションレベルを見いだす努力をすべきだ。わが社の場合、建築のアナロジーは非常に役に立っている」と述べている。
2.計画をぶれさせない
ゴールの設定は、それ自体が目的であってはならない。上級役員の意識が目的から逸れ、重要な事業目標に集中できなくなれば、大きな問題が起きる、とPearce氏は言う。「リーダーシップがぶれると、正しい職場文化を根付かせることが非常に難しくなる場合がある」と同氏は述べている。
「誰もがただ目の前のボールを追いかける、子供のスポーツのようになってしまいかねない。本当に必要なのは、チームとして試合でどうプレイすべきか、各人がどんな役割を果たすべきかを、チームに説明できる人間だ」(Pearce氏)
同氏はまた、幹部は部下に意見を言う機会を与えるべきだとも述べている。成功のためには明確な目標を維持することは重要だが、革新的なアイデアもまた、デジタル変革を新たなよい方向へ向かわせる可能性がある。「規律は必要だが、適切な場面では、従業員のアイデアや創造性を生かす機会を作る必要もある」と同氏は述べている。
3.自覚を促す
個々人の心構えも重要な要素だ。Pearce氏は、正しい職場文化が作れるかどうかは、各人がチームの一員として、自分の役割を理解しているかどうかによると述べている。これは、誰もがタスクやポリシー、手続き、慣例、ガバナンスなどの問題に追いまくられているIT部門では、難しい場合もある。
「それらの仕事も重要だが、日常的な仕事の中で各人が何を意識しているかが、組織の成功を左右する」と同氏は言う。「スタッフの心理に注意を払うことで、どのように意思決定を行うべきか、感情がどのような役割を果たすかについての、各人の自覚が育ってくる」(Pearce氏)
Pearce氏はIT部門のリーダーチームと密に連絡を取り合い、今何が起こっており、それが何を意味し、その課題が組織の各人にどのような影響を与えるかを、各リーダーが把握できるようにしている。「重要なのは、一歩引いて大局的な観点から考えることが大切だと示すことだ」と同氏は述べている。