本連載の前回および前々回で「IT部門の人口ピラミッド問題」について述べてきたが、今回はその中でも根深いIT部門の高齢化問題に触れてみたいと思います。
高齢化問題を抱えるIT部門の実態
「IT部門の人口ピラミッド問題」の1つですが、昨今ではとりわけ、ベテランIT人材の処遇や活用に頭を抱えるIT部門長が多いという実態が見られます。多く聞かれるは、50歳代を中心とするベテランIT人材や定年後に再雇用したシニア人材の処遇や活用に関するものです。
我々に寄せられる質問には、IT部門の役割変化やテクノロジの進化に対してベテラン層のスキルチェンジを促進する方法、ラインマネジメントとしてではなくエキスパートとしてのキャリアパスにおいてモチベーションを高める制度、ベテラン人材を活用すべき業務分野についてなどがあげられ、その内容は多岐にわたります。
IT部門あるいは情報システム子会社において、高齢化問題を抱える企業は非常に多いと言えます。ベテラン社員の処遇や活用に関する問題は、IT部門に限った話ではありませんが、技術革新の著しいIT分野ではより深刻といえます。
ある金融業のIT部門では、平均年齢がすでに50歳を超えており、業務内容に対して賃金が見合わないことに苦慮しています。また、ある製造業の大手企業では、情報システム子会社のベテラン社員が古い技術に固執し、本社IT部門が推進しようとしている新規技術の採用を阻止しようとする動きに困惑しているとのことです。
処遇については、ラインマネジメント(課長・部長など)のキャリアパスと異なる専門的なキャリア職種(専任部長、エキスパート職など)を設置するという方法を採用しているケースが大手企業を中心に多く存在します。
ある製造業では、IT部門に限らず研究開発部門、製造部門、管理部門などで専門的な業務を遂行する人材をエキスパート職として別キャリアを設定し、部下を持たない専門家としてライン長と同等の処遇をするといった制度を運用しています。
しかし、これによってベテラン人材が高いモチベーションを持って仕事に取り組むことができているかという点については、必ずしも成功しているとはいえない面があります。
部下を持つライン長のほうが格上の成功者と見なされ、ラインを持たない専門職は格下の脱落者と見なされる企業文化や意識が残っていたり、専門的な能力や成果を的確に評価する手法が確立されていなかったりといったことから、エキスパート職が正当に処遇されないという声があがっています。