ベテラン人材にも求められる意識改革
IT部門内に、「会計システムの保守を15年やっている」「ネットワーク運用を20年」といったその道一筋という技術者を抱えている事例は少なくありません。こうした専門知識と実務経験を豊富に持った人材がIT運営を支えている部分が大きいのも事実といえます。しかし、そのような塩漬け状態は、組織にとっても、本人個人にとっても決して良くないことは明らかです。
会社側がベテラン人材の能力を生かす場や制度を整備していくだけでなく、ベテラン人材側にも、常に新しい業務分野に挑戦する意欲が求められることはいうまでもありません。
IT部門の業務領域は、大きく企画系、技術系、管理系などに分類できますが、それぞれに豊富な経験や深い知識を必要とする高度な業務分野が存在します。ベテランIT人材およびその予備軍は、担当業務の延長線上にある高度なスキルや知識を習得し、企業の変革やIT運営の高度化に寄与する業務分野を自ら切り開いていくことが求められます。

ベテランIT人材が取り組むべき業務分野(出典:ITR)
IT部門の業務領域や責任範囲は確実に拡大しており、解決しなければならない課題は複雑化しています。一方で、多数のプロジェクトや日常の運用に忙殺され、本来重要であると認識されつつも、手が回っていない重要な業務が多数存在するのも事実といえます。
クラウド化や外部活用の推進により期待される役割の変化を受けて、IT部門は自らのマネジメントのレベルアップを図るとともに、企業の変革に寄与する業務領域に踏み出していくことが求められます。
こうした業務領域でベテラン人材を活用することは、個人と組織の双方にとってメリットがあります。その際、留意しなければならないのは、管理のための管理、業務のための業務を作らないこと、経営者やユーザー部門の理解と協力を得るための説明責任能力を高めていくことです。
- 内山 悟志
- アイ・ティ・アール 代表取締役/プリンシパル・アナリスト
- 大手外資系企業の情報システム部門などを経て、1989年からデータクエスト・ジャパンでIT分野のシニア・アナリストとして国内外の主要ベンダーの戦略策定に参画。1994年に情報技術研究所(現アイ・ティ・アール)を設立し、代表取締役に就任。現在は、大手ユーザー企業のIT戦略立案のアドバイスおよびコンサルティングを提供する。最近の分析レポートに「2015年に注目すべき10のIT戦略テーマ― テクノロジの大転換の先を見据えて」「会議改革はなぜ進まないのか― 効率化の追求を超えて会議そのもの意義を再考する」などがある。