海外コメンタリー

効果的なデジタルワークプレースを実現する鍵--組織力強化へ、今何を見直すべきか - (page 2)

Dion Hinchcliffe (Special to ZDNET.com) 翻訳校正: 石橋啓一郎

2017-01-24 06:30

  • 従業員エンゲージメントは依然として極めて低いままだ。最近公表されたGallupのレポートでは、心理的に仕事に完全に打ち込んでいる従業員は8人に1人しかいないという恐ろしいデータが出ている。また米国人材マネジメント協会によれば、従業員のやる気の問題に切り込む数十の新たなテクノロジ製品が登場しており、職場で使われるデジタルソリューションのさらなる増加につながっている。このことは2つの問題を引き起こしている。第1に、やる気のない従業員は、企業が作り上げた素晴らしいデジタルワークプレースのことをあまり気にしていない。このため、投資全体の大部分が、実際には無駄になってしまっている。第2の問題は、それらの従業員は、デジタルツールがどれだけ強力で効果的であっても、それを生かそうとしないことだ。
  • デジタルワークプレースに詳しいPaul Miller氏が最近使った表現を借りれば、われわれはすでにデジタルワークプレースの「玄関口」を失っている。これは、SaaSやネイティブモバイルアプリが普及し、企業が正式に承認した生産性ツールやコミュニケーションツールを駆逐しつつあるからだ。そういったツールは、SaaS上の文書へのリンクや、スマートフォンのシャドーITアプリなどを経由して、脇道や裏口から入り込んでいる。職場の公式生産性ツールが「Office365」であれ何であれ、われわれの多くは、こうして「Google Docs」やその他の外部のクラウドで提供されているさまざまなツールで多くの作業を行うようになっている。コミュニケーションと協調作業に関する問題については、以前も記事を書いているが、コミュニケーションチャネルやアプリが豊富になる一方で、不幸なことにツールの相互運用性がまったくない現在の状況は(テクノロジ業界はこれを恥じるべきだ)、チームの作業と対話を、助けるどころかサイロ化させ、分断している
  • 特定の目的に適したアプリケーションという観点から、職場で使う新しいツールを見つけたり、判断したりすることは難しい。デジタルワークプレースの「玄関口」には、すべてのデジタルツールが並べられ、簡単にツールが見つかるようになっているべきだが、実際には状況について行けておらず、サポートされており利用可能な新しいソリューションがあっても、従業員に認知されず、アクセスしにくいことも多い。
  • 今日のデジタルワークプレースの各要素は(最近までは、公式採用されている支配的なアプリケーションは各領域につき1つか2つしかない単純な状況だったため、あまり設計に時間が割かれることもなかったのだが)、徐々に増えてきた公式アプリケーションと、各部門や従業員が慎重に選んだ(ただし正式に許可されているわけではない)ソリューションの緩やかな組み合わせになっており、従来よりもずっと充実している。しかしこのツール群は、互いに相性がよいわけでもなければ、機能的な設計方針や、適合させるための計画が感じられるものにもなっていない。しかし筆者は、企業は包括的で、厳密にコントロールされたデジタルワークプレースの設計を目指すべきだと言っているわけではない。むしろ逆に、これまでよりもよりコスモポリタン主義的なデジタルワークプレースを組み立て、位置づけをし、提示し、教育し、統合し、管理し、サポートすることが重要だ。別の言葉で言えば、多様性に富んだ、変化の激しい、コントロールされていない状況に適した、新たなデジタルワークプレースを設計する必要があるということだ。
  • アプリの山ではなく、デジタルワークプレースを作る

     とすれば、従業員が利用しているアプリケーションやシステムすべてを包含する社内のデジタル環境を再検討するなら、企業がデジタルワークプレースの捉え方に関する、新しい現実的なモデルを模索すべきであることは明らかだ。今や、デジタルアプリケーションやサービスの現状が新たな段階に入っていることを認識すべきだ。

     従業員が利用しているデジタルツール群は、もはや公式のアプリやシステムだけからなる完全に統制されたものではなく、首尾一貫した形でより動的に組み合わせられ、アクセスでき、安全性を確保し、進化させていくべきソリューションのエコシステムだと言える。重要なのは、その結果できたデジタルワークプレースは、平均的な従業員にも理解しやすく、アクセスしやすいものでなければならないということだ。平均的な従業員のデジタルスキルも向上しており、今日のデジタル活用能力の可能性を生かせるようになっている。

     そのことなしでは、今後もデジタルツールは企業に入り込み続け、適切に位置づけられ、サポートされつつ積み上がっていく以上、従業員の認知的負荷のレベルは上昇し続け、改善は漸進的にしか得られず、得られるものは少なくなっていくという結果にならざるを得ない。

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