前回は、SD-WANが登場した背景、および、SD-WANの仕組みについて、主に技術的観点から説明しました。今回は、SD-WANが解決する課題や導入メリット、既存WANソリューションとの使い分け、そして、現時点におけるSD-WANの採用ポイントについて解説します。
クラウドサービス普及にともなう新たな課題
総務省が発表した平成28年版情報通信白書(第2部 基本データと政策動向 - 第5章 基本データと政策動向 - 第2節 ICTサービスの利用動向)によると、2015年末時点におけるクラウドサービスを利用している企業の割合は44.6%であり、前年より5.9%上昇しています。
同じ成長率を維持すると仮定した場合、2016年末時点では2社に1社の割合で、インターネット上に展開されたクラウドサービスを利用すると想定されます。しかしながら、従来のWANネットワークはMPLS(Multi Protocol Label Switching)網のような閉域網で構築される事が主流で、インターネットからの通信経路を意識していません。
この部分のギャップが、クラウドサービスを利用する上で新たな課題として顕在化します。こうした背景のもと、クラウドサービスの利用を想定した、WANネットワークの新たな再設計が必要な時代が来ています。
具体的に、従来のWANネットワークにクラウドサービスを追加した際に発生する、新たな2つの課題について図1に示します。
図1:クラウドサービスを導入することによって発生する課題