CIOが知るべき「WANのソフト化」--ネットワークのクラウド化が変えるシステム(後編)

中島隆行

2016-08-03 07:00

 前編では、一般的なSD-WANの概念及びSD-WANがもたらす変革について述べた。実は一概にSD-WANといっても、提供形態やその機能性も大きく二分され、ユーザーは利用用途により賢い使い分けが必要だ。後編ではこれらの違いを解説する。

SD-WAN製品の違いと選択基準

(図2:SD-WAN製品のポジショニングの違い)
(図:SD−WAN製品のポジショニングの違い)

 オレンジのカテゴリは、CPEやvCPEを利用するモデルで、主力の拠点型SD-WANベンダーがひしめき合う。

  • 旧来の機器ベンダー:Cisco、Citrix、Riberbed、Nuage(ALU now Nokia)
  • SI/NI力のある通信キャリア: IIJ、NTTコミュニケーションズ、Verizon
  • 新興SD-WANベンダー:Viptela、VeloCloud

 基本的な構図は、ネットテクノロジの標準化団体であるIETFが推進するラベルスイッチング方式を用いたパケット転送技術であるMPLSやWANの最適化市場を守りたい企業とその市場を取りにいく新興SD-WAN専業ベンダーとの戦いではないだろうか。

 新興系ベンダーはキャリア非依存のオーバーレイや回線アグリゲーション技術、アプリケーション別フロー&ポリシーコントロール、及び低コストを全面に打ち出し、MPLSの置き換えを進めたい構えだ。

 一方で、従来の機器ベンダーは2015年末より相次いでVBに対し出資や買収の形で新技術の取り込みを急ぐ。例えば、Ciscoは新興系有力ベンダーの1社、VeloCloudに出資し、CitrixはCloudBridge、RiverbedはOcedoを買収している。

 一方、通信キャリア系は、顧客のオンプレミスシステムを自社クラウドへ移行させSD-WANを利用した広範囲で柔軟なマネージドサービスを提供したいところだ。

 しかしAWS(Amazon Web Services)やMicrosoft Azureなどの台頭により当初の思惑は一気に進んでおらず、オンプレミスと拠点をつなぐ旧来の閉域網接続は売り上げ比率も高い。そこで自社のMPLSへの付加価値として、MPLSのフェールオーバーや特定業務/アプリケーションの通信(例えば音声やビデオなどのリアルタイムアプリケーション)を分離しオフロードするための製品やサービスとしてSD-WANの利用を打ち出す。

 拠点型SD-WANにおいて、全米に860/店舗を広げるGAPでのVipTela採用事例は恐らく最大級の事例だろう。

 各テナントに占有のアプライアンスを準備すれば、後はゼロタッチコンフィグでアプリケーションごとにポリシーを設定し一元集中管理できるため、導入と運用コストを劇的に改善した。

 日本と違い、国土が広く光ネットワークの帯域が潤沢でない米国では、ケーブルモデムやMPLSの代わりに4G/LTEとSD-WANを利用することで帯域とコスト削減を実現するシーンが加速しているようである。

 緑のカテゴリはCradlepoint(旧Pertino)やCato Networkなど、共用型のデータプレーンと専用のエンドポイントアプリケーションをクラウドから配信し接続管理するエンドポイント(EP)型のSD-WANサービスを展開する。

 NFVのフレームワークにおいて利用できるサードパーティーのセキュリティ機能をデバイスレベルまで可視化し、マイクロセグメントされたネットワークとセキュリティを一元管理できる点が特徴だ。

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