2016年以降、企業ネットワークに携わる方々は、「SD-WAN(Software Defined WAN)」という言葉に触れる機会が増えていると思います。しかしながら「SD-WANとはどのような仕組みなのか」「SD-WANを導入して何が解決できるのか」「SD-WANのメリット・デメリットは何か」といった素朴な疑問に対して、解決するための情報が不足しているのが現状です。
そこで本連載では「SD-WAN」というキーワードについて、代表的な製品を取り上げ、利用シーンやメリットを具体的に詳しく解説していきます。
第1回となる今回は、SD-WANの主な仕組み、および、SD-WANが登場した背景、主要プレーヤーの特徴について解説します。
SD-WANの主な仕組み
「SD-WAN」を明確に定義するのであれば「SDN(Software Defined Network)の考え方を企業WAN環境に適応させた製品やサービス」となります。なお、「SD-WAN」というキーワード自体は、ある特定の企業や商品、機能名、通信規格などを示すものではありません。
まず、「SDN」と「SD-WAN」のコンポーネントを比較しつつ、その類似点と相違点を説明します。

「SDN」と「SD-WAN」のコンポーネント比較
SDNを導入するメリットは、(1)「SDNコントローラによる管理一元化」により(2)「データセンター内に展開された仮想ネットワークを柔軟に構成変更」するために(3)「端末への設定変更が簡単に行える」点にあります。すなわち、運営管理にかかるコストを軽減し複雑化したデータセンターネットワークを迅速に構築でき、柔軟性を享受することができます。
これと同様に、SD-WANを導入するメリットは、(1)「SD-WANコントローラによる管理一元化」により(2)「WAN上に展開されたオーバーレイ ネットワークを柔軟に構成変更」するために(3)「端末の設定が簡単に変更できる」と言い換えられます。これによって、SDNと同様、地理的に離れた拠点間のネットワークの管理を簡素化し、運営コストの軽減が期待できます。
技術的な点でも「SDN」と「SD-WAN」は非常によく似通っています。たとえば、(4)「データプレーン」と(5)「コントロールプレーン」は完全に分離されており、設定変更による実通信への影響を考慮する必要がありません。
一方で、相違点もあります。SD-WANコントローラが提供ベンダーによりインターネット上のクラウドから提供されるタイプの製品は(5)「コントロールプレーン」の通達経路を確保するために、インターネット接続環境が必須条件になるケースがあります。また、(6)「API」については、SD-WAN共通の標準フォーマットのようなものは存在しません。今後の機能拡張に期待します。