CIOが知るべき「WANのソフト化」--ネットワークのクラウド化が変えるシステム(前編)

中島隆行

2016-08-02 07:00

 今年に入りSD-WAN市場が盛り上がりを見せている。これまで何十年も変わらなかったネットワーク領域にもいよいよクラウド化の流れが到来である。

 最高情報責任者(CIO)など経営層の課題は、生産性を向上させるために市場ニーズへリアルタイムに応えことであり、いつでもどこからでも必要なサービスやコンピュータリソースをオンデマンドで安全に活用できるハイブリッドなIT活用環境の整備が求められる。シェアードエコノミー、グローバル化、API連携、AI/ビッグデータの活用など、情報の連携を柔軟かつダイナミックに実現するIT/ネットワーク環境はますます重要となっている。

 一方で、IT管理者の課題は深刻である。クラウド、モバイル、IoTの活用や、外部との情報連携、さらにはM&Aやグローバル化が進むとネットワーク環境はどんどん複雑化しWANを流れるトラフィックも増加する。しかしIT管理者は競争力を維持するために、迅速、安全かつコストを抑え、確実に対応し、管理することが求められている。

 SD-WANは企業経営層やIT管理者が抱えるこれらの課題へ解決策を提供するプラットフォームである。言い方を変えると、スパゲティ化した複雑なネットワークから可視化、コントロール、セキュリティを取り戻し、生産性を上げる攻めの経営へ転じるためのツールだと理解いただきたい。

SD-WANの概念と市場

 SD-WANは文字通りソフトウェア定義型のWAN、物理ネットワークに依存しない抽象化されたオーバーレイのネットワークである。論理的なフルメッシュやスター型のシンプルなトポロジが管理を容易にし、更にダイナミックな経路やポリシーの変更管理が可能、拠点へのネットワークもゼロタッチコンフィグで一元管理できる。

 基本的な考え方はSDNと全く変わらない。従来のハードウェアから分離されたネットワーク機能は、コントロールプレーンとデータプレーンに分けられ、ネットワークの頭脳というべきコントロールプレーンは管理コンソールと共にクラウドサービスとして提供され、実際のデータが通るデータプレーンはCPE、バーチャルCPE、クラウドサービス(共用型)いずれかで提供されるアーキテクチャが、SD-WAN製品の一般的な実装方法となっている。

(図1:一般的なSD−WANアーキテクチャイメージ)
(図1:一般的なSD−WANアーキテクチャイメージ)

 IDCがリリースした3月の調査によるとSD-WAN市場が2020年までにグローバルで60億ドル規模(約6000億円)に達する。またIDC Japanが1月に発表した調査レポートでも、今年は国内企業の10%がSD-WANを含むマネージドネットワークを導入し、2020年には50%まで利用者率が上昇するとしており、国内外で急激な需要の増加が予想されている。

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