SD-WANの採用ポイント(2017年1月現在)
それでは、Hybrid-WANを想定しない場合における、SD-WANの採用ポイントはどのような点でしょうか。また、物理ベースの従来型WANと、どのように使い分ければ良いのでしょうか。
2017年1月現在で、最も重要視すべき判断基準はSLA(Service Level Agreement)と筆者は考えています。次に重要視すべき判断基準は、ネットワークを利用する企業の特性です。
従来型WANソリューションとSD-WANの使い分け
非常に高いSLAが要求される場合
SD-WANはSDNから派生した技術のため、ほとんどのSD-WAN企業は、「SD-WANコントローラ」をクラウド上に構築してサービスを提供しています。2017年1月現在で、最も有名なクラウド基盤を提供しているAWS(Amazon Web Services)が保証するSLAは、月額利用可能時間99.95%です。
よって、SD-WANコントローラが100%の稼働を担保したとしても、システム全体としての「99.95%の壁」を超えることはできません。従って、導入の前提として99.95%以上を求めるようなミッション・クリティカルなネットワークにおいては、引き続き、物理ベースの既存WANソリューションが適切と言えます。
また、そのような環境ではCLI(Command Line Interface)を理解できる優秀な技術者が必要になりますので、SD-WANの強みである「専門知識がなくとも簡単に導入、運用が可能である点」が評価されない傾向にあります。
データプレーンのみに注目すると、端末間で直接オーバーレイネットワークを構築しますので、クラウドサービスのSLAに影響を受けません。もし、SD-WANコントローラに、99.95%以上の稼働率を求めないのであれば、ミッションクリティカルな環境へのSD-WAN導入は可能となります。また、一部では、SD-WANコントローラのクラウド提供をやめ、全てオンプレミスで提供(すなわちSDNへの原点回帰)する動きもあります。