中程度のSLAが要求される場合
SLAが図中の「Mid」に位置するネットワークは、ノン・ミッションクリティカルと呼ばれるトラフィックが流れています。そして、メール・ファイル共有、ファイル保存など、日常業務に関するトラフィックの大半は、Midに該当します。
それは、オンプレミスからクラウドサービスにシフトしていく業務部分とも一致しており、革新性を重要視する企業から順に、SD-WANとの相性が向上していきます。したがって、将来的に、クラウド技術の進歩とともに、Mid領域がカバーするエリアは広がると考えます。
高いSLAが要求されない場合
SLAより運用性とコストを重視するネットワークにおいて、SD-WANは広く受け入れられます。例えば、日本企業の海外オフィス、数週間だけ利用するスポットオフィス、専用線の契約が困難な離島など、ニッチですが確かなニーズが存在します。
このような環境は今まで「社外ネットワーク」として扱われがちでしたが、SD-WANを導入することで「社内ネットワークの一部」として組み込むことが可能になり、運営管理がしやすくなります。また、スタートアップ企業を対象とした「従来のSD-WAN」構想がマッチする領域でもあります。
最後に、第1回の冒頭に提示した「皆様から頂く素朴な疑問」について、筆者なりの回答を考えましたのでご紹介します。
「SD-WANはどのような仕組みか?」
SDNの考え方をWAN環境に適応させた製品やサービスです。
「SD-WANを導入して何が解決できるのか」
クラウド技術が普及するに従って発生してしまうネットワーク上の新たなウィークポイントを解決します。
「SD-WANのメリット・デメリットは何か?」
メリット:端末がどこに配置されていても(たとえ海外であっても)ウェブブラウザから簡単に、導入・運用・管理が行えます。また、オペレータにCLIベースの技術知識を求めません。
デメリット:SLAの向上には、クラウド技術の進歩を待つ必要があります。また、「SD-WAN」という言葉が包括するテクノロジが拡大しつつあるため、「何を課題と感じており、何を解決したいか」を常に意識する必要があります。
- 畳家 庄一 ネットワンシステムズ株式会社 市場開発本部 ソリューション・サービス企画室 第1チーム
- 2006年よりDPIを実装したQoS/FW/WoC製品を中心に、 L4~L7で稼働するネットワーク製品の提案、評価、検証、技術サポートを担当。現在はクラウドを前提としたSD-WAN・Hybrid-WAN市場の調査、検証、サービス開発、および、ソリューション開発に取り組んでいる。