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山谷剛史の「中国ビジネス四方山話」

中国の伝統的お年玉「紅包」がITトレンドを前進させる

山谷剛史

2017-01-24 08:32

 中国ではこれから本当の正月「春節」がやってくる。帰省し家族親族が一同で集い「紅包(ホンバオ)」なるお年玉を渡すのが伝統行事だが、過去3年は、伝統の紅包の習慣を活用して、エスクローサービスで電子マネーの阿里巴巴(アリババ)の支付宝(アリペイ)や騰訊(テンセント)の微信支付(ウィーチャットペイ)を一気に普及させた。

 決まった時間にアプリを開いて、振ると金一封が協賛企業から落ちてくるという期間限定のサービスに、多くの人がアプリをインストールし振りに振った。また去年は国民的番組の中国版紅白「春晩」が提携、多くの人がテレビを前にしてスマホを振り紅包をもらった。この時期、支付宝と微信支付などがネットサービスの利用促進目当てに伝統的紅包を活用する戦いを中国語で「紅包大戦」と呼ぶ。

 今年も新たな紅包大戦がはじまっている。さまざまなニュースを見る限り、どうも主役の支付宝と微信支付は、ただ振って金一封をもらうというキャンペーンに消極的なようだ。なんでも阿里巴巴も騰訊も既にサービスが十分普及しているので、やる必要はないとのこと。ただこれも実際春節が来ないとわからない。

 今年は(あくまで春節前の状況だが)AR(+LBS)の普及に動く。ARとLBS(位置情報サービス)ということは、模倣ではないものの、ざっくりいえばPokemon Goみたいなものだ。地図上に表示されるスポットを目指し、到達してアクションを起こすと紅包がもらえるというもの。先日中国の報道で、「Pokemon Goのようなゲームは安全上の問題から出ることはない」という話が出ていたが、結局はリリース済みとなった。

 騰訊のチャットサービス「QQ」はスマホ版アプリで、AR+LBSの時限的サービス「天降紅包」を提供する。1月20日から24日まで、毎日午前11時から夜9時まで、総額2億5000万元(42億円弱)の現金と30億元(約500億円)の商品券の紅包の雨を降らせる。また14都市に紅包スポットを設置、利用者に正午に8~188元(約130~3100円)という金額の大きな紅包を用意する。

 毎年参戦の支付宝も2億元分(33億円強)の賞金を用意し参戦する。支付宝もARとLBSを活用する。やはり、Pokemon Go風の地図を見て動いてスポットで紅包をもらうというキャンペーンもあるが、一方で街中の「福」の字をスキャンすると紅包がもらえるチャンスが与えられるキャンペーンも実施。

 中国人の所得は年々上がり、生活水準は向上しているが、一方でサービスの激安利用キャンペーンや、紅包の金一封が参加賞でだいたい日本円にして数円程度のキャンペーンに熱視線が今も集まる。一定の人々がPokemon Goのようなサービスを経験し、どのようなものかを理解するだろう。

 ただ、2016年までの紅包大戦はアプリを開き、決まった時間にスマホを振ればいいので紅包獲得への道は平坦だが、今回は地図と連動しているため地図が読めなくてはならないので紅包獲得のハードルは高い。

 中国に限った話ではないが地図が読める人は日本人が思うほどに多くなく、だからといってたかだか1つの紅包の数円のためにこの春節で地図が読める人が一気に増えるとは思えない。とすると、今回の春節では、例年よりはネット版紅包で盛り上がることはなく、地図が読める程度の間でAR+LBSサービスが認知される程度になりそうだ。

 蛇足となるが、先に書いた中国版紅白「春晩」で、VR版が出るのでは?という報道もある。筆者は過去に一般的な新聞で、ものは試しと、赤いフィルムと青いフィルムの簡易3D眼鏡向けの3D新聞を出したのを見たことがある。本当に出るか怪しい、利用する人はいるのか、などと足踏みをしそうなサービスを本当に勢いで出してしまうことがあるのでVR版春晩は出ないとはいいきれない。VR版も放映されて、一部の人がゴーグルをかぶってVR普及が進むなら、それはそれで面白くうらやましくもなるストーリーではないか。

山谷剛史(やまやたけし)
2002年より中国雲南省昆明市を拠点に活動。現在NNA所属。中国、インド、アセアンのITや消費トレンドをIT系メディア・経済系メディア・トレンド誌などに執筆。メディア出演、講演も行う。著書に「中国のインターネット史 ワールドワイドウェブからの独立(星海社新書)」「新しい中国人 ネットで団結する若者たち (ソフトバンク新書)」など。

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