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旧正月の「テト」前後は、仕事にならない魔の季節?--ベトナムの事情

古川浩規(インフォクラスター)

2014-02-20 05:45

ベトナムの最大イベント、テト

 これまで、5回にわたり「ベトナムのIT事情」として連載してきましたが、今回から少し趣向を変えて、ベトナムの日常生活を中心にお伝えしていきます。オフショア先としてお付き合いしているベトナム現地の会社や、自社の現地法人のベトナム人スタッフが見せる職場外の一面を感じていただければと思います。

 さて、この記事が掲載される頃には、ベトナムでは「テト」と呼ばれる旧正月の大型連休が終わり、ベトナムの社会全体が本格的に稼働し始める時期になっていることでしょう。このテトは、ベトナム人にとって1年で最大の関心事であると共に重要なイベントです。

 今年の日本のお正月休みはカレンダーの並びが良く、長期休暇となった人も多かったと思います。そのため、仕事初めを迎えても「何となくまだ正月気分が抜けない」「松が明けるまではなんとなくそわそわとした気分」という方もいたのではないでしょうか。

 実は今年の2月中旬は、ベトナムでもちょうどこうした雰囲気が終わりかけているという時期に当たります。特に今年は、ベトナムでもカレンダーの並びが良く、多くの組織ではテト休暇が1月28日~2月5日までの9連休となっていました。日本で9連休というのも長い連休ですが、日本よりも国民の休日が少ないベトナムで連休が9日もあるということはとても珍しいことです。

 ここで「今年の」と限定したのは、テトは陰暦の1月1日によって決まるため、毎年、時期が変わるためです(ちなみに、2014年は1月31日、2013年は2月10日が陰暦の1月1日でした)。ベトナムでの生活には陰暦が深く関わっているためですが、まさに中国の「春節」と同じものになります。

 ベトナムでお正月と言えば「旧正月」を指します。グレゴリオ暦の1月1日はベトナムでも「元旦」として国民の休日に指定されていますが、日本人のように「『さぁ、今年も頑張るぞ!』という日」というわけでもなく、「年の初めの休日」といった程度のものでしかありません。日本のように飾りつけをするでもなく、むしろクリスマスの飾りつけが至る所に残っているあり様です。特にホーチミン市をはじめとする南部に住んでいる日本人は、「気温は30度近くあるし、日本のような年末年始の休みがあるわけではないし、正月気分にならない」とボヤく時期でもあります。

 一方、ベトナム人にしてみれば、1月1日の元旦あたりから、正月に飾るための花の準備(北部ではピンクの桃の花、南部では黄色の梅の花を家の中に飾り、門松用にはミカンの木や菊の花を飾ります)や帰省の交通手段の確保といった、旧正月に向けての準備に取り掛かろうかという気分になるようです。

 地元政府主催の大きな会議であっても開催の1週間前を切ってから案内状が届いたり、「今日のお昼に結婚式をするので参加してください」とその日の朝に招待状を持ってきたりすることもあるベトナム社会で、1カ月も前から旧正月の準備を気にし始めることからも、ベトナム人にとって旧正月がいかに重要な行事かを推測できます。

もち米・豆・豚肉をバナナの葉で包んだ、伝統的なテトの食べ物。北部ベトナムでは立方体に作り、南部ベトナムでは写真のように円筒形に作る。
もち米・豆・豚肉をバナナの葉で包んだ、伝統的なテトの食べ物。北部ベトナムでは立方体に作り、南部ベトナムでは写真のように円筒形に作る。

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