各国からベトナムへの投資は引き続き順調であるものの、日本からの投資は以前ほど活発ではないように感じます。昨年12月31日付で発足したASEAN経済共同体(AEC)が動き始めて半年余りが経過したこともあり、今回は、各国からの投資の状況について概観してみます。
存在感を増す韓国企業
ベトナムを含めた東南アジアでは、1月1日は祝日の1つとして祝う程度で、旧正月を盛大に祝い長期休暇とすることがあります。旧正月の前後は、官民ともに仕事にならないことが多く、いわゆる「開店休業」状態となることも珍しくありません。
本年の旧正月は2月8日だったので、昨年の12月31日にAECが動き始めても、実質的には7月が終わるころまで待たなければAEC発足後の動きを見極めることも難しいと考えていました。8月に入り、ベトナム政府や各都市での投資概況が公表されたので、これらを概観してみたいと思います。
ベトナム政府計画投資省のデータによると、7月20日までの本年の海外からの直接投資(FDI)実施額は85.5億ドルとなっています。前年同期間比で15.5%増となっていることから、引き続きベトナムでの外資系企業の活動は活発であることがうかがえます。
FDIの登録額も、前年同期間比で46.9%増の129.4億ドルとなっており、海外からの投資計画は特に活発なようです。国別では韓国がトップ(32.5%)で、以下、シンガポール(10.7%)、日本(10.6%)となっており、韓国企業の投資額の大きさが目立ちます。
なお、韓国からの投資は官民問わず活発になっており、政府開発援助(ODA)についても日本を抜き、累積でも年間でも国別で第一位となりました。ベトナムにおける韓国系企業の勢いも好調なようで、「日本人相手よりも韓国人相手の商売の方が活況」という評判も伝わってきます。韓国の存在感が日に日に増してきているようです。
ASEAN諸国からベトナムへの投資は?
計画投資省の資料でASEAN諸国からの投資に対する概況が示されるようになったのは直近のものからですし、手元にある資料だけでは対前年比の状況を知ることができません。そこで、国別と投資分野別の統計を見ることでASEAN諸国の動きを概観してみます。
ASEAN域内でベトナムへの投資に最も積極的な国はシンガポールとなっており、ASEAN域内からベトナムへの投資額の59.1%を占めています。以下、マレーシア(21.5%)、タイ(14.6%)、ブルネイ(3.3%)となっており、インドネシア、フィリピン、ラオス、カンボジアといった国からの投資はあまりありません。
投資分野としては製造関連が最も多く投資額の約4割(42.9%)を占めており、これに不動産関連が29.4%で続きます。また、投資地域はホーチミン市へ26.8%、ハノイへ13%となっており、以下、バリア・ブンタウ省、ビンズオン省、ドンナイ省といった大都市に集中しています。
過去の経緯や、投資分野や統治地域といった上記の投資状況から推測すると、「VSIP(ベトナム - シンガポール工業団地)やAMATA(タイ最大の工業団地開発運営会社)工業団地といった大規模工業団地をはじめとする不動産開発に注力するシンガポール企業やタイ企業」と、「実際に工場を建設し操業するために製造関連に投資をするマレーシア企業」という状況にあるのかもしれません。
いまやベトナムへの直接海外投資の約2割(19.3%)をASEAN諸国が占めています。ベトナムへの投資におけるASEAN域内からの投資は、すでに無視できない大きさになっていることは間違いなさそうです。