今回は、ベトナムで行われたイベントの報告を行うことで、本年の日本とベトナムのICT協力関係について概観してみます。
セミナー当日は、日本とベトナムの郵便に関する協力協定覚書のサインセレモニーも行われた。日本の経済産業省が所掌する経済分野からの協力だけではなく、日本の総務省が所掌する情報通信・郵便分野からも、技術的な協力関係構築を含めた幅広い協力体制の構築が今後図られると思われる。
1月15日に「日越ICTフォーラム」(ベトナム・情報通信省と日本・総務省との共催)がハノイで行われました。このフォーラムは、情報通信分野におけるベトナムと日本との二国間協力関係の強化を図るため、日越両政府要人および企業VIPの間で、日越両国の持続的な成長につながるICT利活用策(ICTインフラ、次世代放送技術、交通、防災、農業など)について議論するとともに、日越両市場に対する新規参入や販路拡大を企図する企業のネットワーキングや投資・パートナーシップなどを検討する機会を提供するために開催されたものです。
日本からは西銘総務副大臣をはじめとする官民62団体200人が参加。ベトナムからもNguyen Thanh Hung情報通信省副大臣をはじめ、各地方都市の情報通信局の幹部や民間企業からも多数参加するなど、大きなイベントでした。担当した政府当局の担当者から、「非常に盛況」とのコメントも聞かれたほどです。
ICT分野において近年加速する、両国政府間の交流
開始間際のセミナー会場での一コマ。朝一番から、日越の国籍を問わずに多数の参加者が来場し、日越両国間における互いの関心の高さを伺い知ることができる。
日本とベトナムでの要人の往来は、2013年1月の安倍首相のベトナム訪問を皮切りにこれまでも行われてきましたが、ICT分野についても活発な動きを見せていると感じています。特に2013には、日本とベトナムの両国間でのICTに関する政府間協力協定を更新させ、これに新たに郵便分野での協力も加えられました。
2014年3月には当該協力協定を踏まえた二国間協力の加速が確認されたことから、民間レベルでのベトナムへの投資に加え、ODAだけではない政府レベルでの動きにも注意が必要だと感じています。その意味で、今回のセミナーが行われた意義は大きいと感じています。
ICT分野におけるベトナムへのODAの歴史は意外と古く、ベトナム戦争終結前の1973年より始まっています。ODAでの支援内容としては、ベトナムにおける情報通信網の整備といったインフラがこれまで主な対象となっていましたが、2010年代に入り、「税関近代化のための通関電子化」や「ハノイ首都圏高速道路交通管制システム整備」といった ICT関連分野へのODA実施の動きも出てきました。
さらにセミナーでの日越両政府の発言を踏まえると、今後はこのようなICT関連分野を両国の新しい協力分野とすることが想定されているようです。実際にお話を伺ったある省(日本の都道府県レベルに相当)の情報通信局副局長からは、「ITS(高度交通システム)以外の交通システムに資するシステムであったり、広く社会システムを支えるためのICT関連技術が日本から提供されることは非常に喜ばしく思う」との発言がありました。