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ベトナム人のゲン担ぎ

古川浩規(インフォクラスター)

2014-07-01 07:30

ベトナムは仏教国だと言うけれど

 ベトナムを語るとき、「ベトナムは仏教国なので生活様式が日本に近い。しかも日本と同じ大乗仏教なので、なおさらだ」と、よく言われます。確かにベトナム人の普段の生活に仏教は浸透していますが、「葬式仏教」とも揶揄(やゆ)される日本の仏教とは少し違うところもあります。今回は、「ゲン担ぎ」としての仏教も含めた、ベトナムの風習についてお伝えします。

 日本では身近な家族の法事の席に「初めて見た親戚がいるけど、誰?」という話が出たりしますが、ベトナム人が「家族」と言うときには、非常に広い範囲の親族を指すことが多いようです。「祖父の弟の孫の配偶者の実家」というような、日本人の感覚ではとても親族とは呼べないような間柄でさえ、家族という部類に入ることさえあります。この意味で、家族という言葉は“身内”と置き換えることもできるのでしょう。

 加えて、ベトナムでは年長者に対してきちんと敬意を払い、大切に接遇します。今どきの格好をした20歳前後のお兄ちゃんが、杖をついた家族が散歩に行くのをかいがいしく介助をしているといった光景はベトナムではさほど珍しくありません。年長者が亡くなったときにも、自分の大切な家族であるため、いつまでも大切に敬う気持ちを持ち続けています。

 実際ベトナム人のお宅には最上階などに大きな祭壇が設けられており、毎日お供え物をして、大切に扱われていることをうかがい知ることができます。この祭壇は5代前までのご先祖様や土地の神様などをお祭りしているのですが、ベトナム人の生活にとっては非常に重要な場所です。


家を新築したら、呪い師さんに来てもらってお札を張ってもらうことも大切な行事。漢字が書いてあるものの、現代のベトナム人で漢字を理解できる人はほとんどいない。

 例えば、ベトナムで結婚式を挙げるとき、新郎が新婦の自宅を訪れたり、その後で新郎の自宅にあいさつに来たり、式当日にもいろいろとやらなければならないことがありますが、この時にも「ご先祖様へのご報告」としてこの祭壇に報告します。最近は少なくなりましたが、日本でも各家庭に仏壇が設けられ初物をお供えしたり、帰省の際には「ごあいさつしていらっしゃい」と促されたりするのとよく似ています。

 また、「旧暦の毎月1日と15日に肉や魚を食べない」といったベトナム人の習慣こそ、生活の一部に仏教が大きく根ざしている良い証拠です。これは決して年配の方だけが行っているものではなく、大学を卒業したての若者であっても同じです。しかも、ご利益を期待してというものではなく、自分の気持ちとして実践しているのです。

 そのため、筆者の会社でも、皆で楽しく食事をした後で「しまった。今日は魚を食べちゃダメな日だった」と気付いて落ち込む社員がいたりしますが、「宗教的タブー」についての意識が薄くなりつつある日本人からすると、不思議な光景に映ります。

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