ベトナムでも「お天道様は見ている」?
このように、ご利益につなげるためにゲン担ぎをすることは、国を問わずどこでも同じかもしれません。その意味で、これらの豆知識を持っておくことは、その国の人と上手に商売を進めていく上での1つのノウハウであり、言い換えれば、その国とお付き合いをするのであればある程度の慣習を知っておく必要があると言えるかもしれません。
最後に、日本人にも身近に感じられるベトナム人の風習を2つご紹介します。
まずは、出産後の風習について。日本でも、初宮参りやお食い初めといった健やかな成長を祈るための風習がありますが、ベトナムでも独特の風習があります。それは、「生まれて1年以内の赤ちゃんに対して、『かわいい』といった褒め言葉を決して使ってはいけない」ということです。これは、「天の神様は、たくさん褒められた赤ちゃんよりも、あまり褒められなかった赤ちゃんを優先して、幸運を授けていく」とされているためです。
もう1つは、旧正月前の恒例行事についてです。ベトナムでは、各家庭のかまどに神様をお祭りします。最近のベトナムの都市部では、かまどがある家庭が少なくなってきており、ガスコンロの傍にお祭りすることも多いのですが、このかまどの神様は、「旧暦の12月23日に鯉に乗って天へ各家庭の様子を報告に行く」とされています。そのため、この時期が近づいてくると、良い報告をしてもらうようにかまどの神様にお供え物をして、川に鯉を放流するという風習があります。
これらの話を聞くと、ベトナムにも「天の上にはこの世を統べる神様が存在し、我々の生活を常に見ている」という考え方が根底にあるような気がします。ベトナムでは犯罪が少なく、外国人にも比較的安全な国であると言われますが、このような「誰も見ていなくとも、お天道様は見ているよ」という、日本人と同じような思想がベトナムにもあるのかもしれません。

- 古川 浩規
- インフォクラスター
- 内閣府及び文部科学省で科学技術行政等に従事したのち、平成20年に株式会社インフォクラスター、平成22年にJapan Computer Software Co. Ltd.(ベトナム・ダナン市)を設立。情報セキュリティコンサルテーション、業務系システム構築、オフショア開発を手掛けるほか、日系企業のベトナム進出に際して情報システム構築や情報セキュリティ教育等を行っている。資格等:国立大学法人 電気通信大学 非常勤講師、日本セキュリティ・マネジメント学会 正会員、情報セキュリティアドミニストレータ、財団法人 日本・ベトナム文化交流協会 理事