生活に息づく仏教以外の宗教的習慣
一方、普段の生活が仏教一色かと言えばそうではありません。日本と同じように地域性も出てくるところですが、一般的によく見かける光景をご紹介しましょう。
ベトナムで買い物をしていると、地元の小さな商店でも若者向けの現代的なお店でも、入口の目につくところに小さな祠が祀られていることに気づきます。これはベトナム人の店主や従業員にとって非常に重要な商売の神様ですが、日本のように「商売の神様=恵比寿様、大黒様」というわけではなく、店主の性別、年齢等によりお祭りする方角や神様が異なるそうです。この神様に、毎日、果物をはじめとする食べ物や線香をお供えし、手を合わせることからお店の一日は始まります。

ベトナムのお店ではよく見かける商売の神様。毎日のお供えは大切な仕事。
このような商売上の慣習はほかにもあります。
- その日一番に来たお客さんは、値切ってはいけない。もし、このお店でのその日の売り上げが悪ければ、その値切ったお客さんのせいとなる
- 飲食店でお客さんのお世話をした後でお客さんが続いてくると、そのお世話をしたお客さんのおかげ。福の神として一品サービスしてくれることもある
また、ベトナムに出張し、ベトナム企業と何かしらの契約を交わそうとするとき、「契約を交わすのであればこちらの会議室で」という要望を聞くことがあります。これは、その会社にとって「この会議室で交わした契約は失敗しない」といったジンクスがあり、縁起を担ぐ意味があるためです。契約のためだけにわざわざ部屋を変えると言い出した時には、何かのゲン担ぎかもしれません。
また、普段の生活においても、冠婚葬祭の日取り、恋人との相性、旅立ちの日なども、占いの結果や以前経験したこととの類似性・因果関係を気にすることがしばしばあります。