オフショア開発、ベトナムの魅力とは--エボラブル アジアに見るビジネスの流儀(2)

坂本純子 (編集部) 2013年08月05日 07時30分

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 オフショア開発の拠点として注目を集めているベトナム。2012年3月からオフショア開発を手がけるエボラブル アジアはベトナムで急成長している企業の1つだ。第1回めに続き、今回は現地に赴任する日本人に話を聞いた。

現地スタッフに聞く、ベトナム開発のメリット・デメリット

ベトナムホーチミン
ベトナムホーチミン

 エボラブル アジアでは、プロジェクトを率いる企業の日本人が1名以上赴任し、現地でマネージメントをするのが基本だ。数カ月おきの交代か、長期の赴任かはそれぞれの会社によって異なる。

 赴任にあたってはコミュニケーションの不安もあるかもしれない。実際に働く中でどのような印象を受けているのか。5社に話を聞いた。

中国と比べても「バランスとして一番いい」--旅キャピタル田村氏

 旅キャピタルは、エボラブル アジアの親会社でもあり、自らもそこに最も多い20人ほどのスタッフを抱えて事業を展開している。旅行関連のウェブサイトを運営しており、そのシステム開発を行っているという。

旅キャピタルの田村亮二氏(右)とコミュニケーターのNgo Thanh Ngan氏(左)
旅キャピタルの田村亮二氏(右)とコミュニケーターのNgo Thanh Ngan氏(左)

 システム開発部のマネージャーである旅キャピタルの田村亮二氏は、ベトナムにおける開発のメリットについて「日本人に合っている国民性、コストの両面がある。コストは10年前の中国と同じぐらい。国民性が一番違うところ」と話す。

 スタッフの技術はどうか。「スキル面、プログラマとしては成熟しているが、SEとしてはまだこれから。イチから要件を聞いて組み立て行く──というところまではいかない。でも、プログラミングの力は持っているし、日本と遜色のないレベル。SEを埋める部分は、一緒にやっていく中で育てていく」とした。

 田村氏は中国におけるオフショア開発の経験もあり、比較すると「(日本人に対して)軽い敵対心がある。言われたことだけ、ハコをつくってやるという感じで、こちらの事情は考えてくれない。ベトナムではくだらない事情もくんでくれて、一緒に考えてくれる。僕の中では中国でやるなら日本でもいいのかなと思う。バランスとして一番いいのがベトナム。国民性が合っている、というのは一番重要なこと」と話す。

オフィスの窓から見える風景
オフィスの窓から見える風景

 苦労していることはないか尋ねると、「あまりないですね。国民性が明るくて前向き、素直なのでマネジメントしやすい。ただ、おおざっぱで細やかさはもっていないので埋めていく必要がある。われわれは、抜けのチェックし、見極めて埋めていく役割」とした。

 ベトナムでは日本以上に残業を好まない国民性とコストの問題がある。「ベトナムは残業コスト高く、1.5倍になってしまう。その背景もあって、残業させるよりも人を増やそうという方向にシフトした。結構な人数がいるので、外から見ると余力があるように見えるかもしれない」(田村氏)

教育すれば「ジャパンクオリティも可能」--アリスタソリューション島田氏

アリスタソリューション システムエンジニアの島田義秀氏
アリスタソリューション システムエンジニアの島田義秀氏

 「日本ではもう人がいない」──そうして、システム開発を手がけるアリスタソリューションは、ベトナムにやってきたという。2012年6月から10人規模で業務支援サービスを展開する。システムエンジニアの島田義秀氏は「能力が高いが、ただやっぱりクオリティは日本よりは低い。でも、話してみると単純に知らないだけ。そこの教育をすれば、ジャパンクオリティも達成可能。開発だけを依頼しているだけではなくて、設計やマネージメントなど全般を行っている」と評価した。

受け身でなく「提案もしてくれる」--クロスコ宮下氏

クロスコ プロデューサーの宮下永慈氏(右)とパートナーのコミュニケーターのDo Anh Vu(左)
クロスコ プロデューサーの宮下永慈氏(右)とパートナーのコミュニケーターのDo Anh Vu(左)

 映像制作などを手がけるクロスコは、同社のウェブサイトでも「ベトナムで映像制作拠点を開設」とベトナムラボとしてアピールしている。オフショア開発を行っていることは表に出さない企業もあるが、逆に「オフショア特性を活かした低価格大量生産の映像提供サービスを目指す」と強みにする。プロデューサーの宮下永慈氏は「単に仕事をこなすだけでなく、こういうほうがいいんじゃないかと提案もしてくれる」と話す。

 なお、コミュニケーションの基本は英語と日本語だ。全員が日本語を話せるわけではないため、コミュニケーションに困った場合は、日本語が堪能な「コミュニケーター」と呼ばれるベトナム人スタッフが架け橋となる。

「英語でも会話でき、スキルも高い」--スターマーク手塚氏

スターマーク ディレクターの手塚亮氏
スターマーク ディレクターの手塚亮氏

 100年以上続く老舗の店を集めた通販サイト「老舗通販.net」は、意外なことにベトナムで作られていた。老舗通販.netを手がけるスターマークのディレクターである手塚亮氏は、「英語でも会話ができ、スキルも高いし、提案もしてくれる」とし、受け身でない姿勢を評価した。

「素直でプロ意識も高い」--A+LIVE竹田氏

A+LIVEのマークアップエンジニア竹田大地氏
A+LIVEのマークアップエンジニア竹田大地氏

 名古屋に本社を置くウェブ制作やデザインを手がける「A+LIVE」(アライブ)のマークアップエンジニア竹田大地氏は「発展途上国というイメージを持っていたが、来てみると思ったよりいいところ。素直なスタッフが多く、プロ意識も高い」と称賛した。

プール付きのマンションも--ベトナムでの暮らしぶり

 駐在スタッフに、仕事以外の日常生活を聞くと、一様になじんでいる様子がうかがえた。「たまに日本に帰ると、みんな疲れていてそんな国だったかなって思ってしまう。日本に比べたらストレスフリー」──ある日本人スタッフはそう話す。日本人から見れば物価が安いベトナムでは、プール付きのマンションに住むのも特別なことではない。

 そんな話を聞くと憧れを抱くかもしれないが、「でも、いつ掃除されているか分からないので入ったことがないんです(笑)」。それもまだ現実なのである。

 次回は、ベトナムスタッフのモチベーションアップの施策をお伝えする。

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