ベトナムでビジネスをする

ベトナム市場を悩ませ始めた弱点とは

古川浩規(インフォクラスター) 2015年03月02日 14時11分

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ベトナム側が強く意識する「チャイナプラスワン」

 2月3日に東京で「ベトナムIT DAY 2015」が開催されました。一般社団法人 情報サービス産業協会(JISA)とベトナムソフトウェア協会(VINASA)との共催によるもので、ベトナムIT市場における日越協業状況を紹介し、オフショア開発などでベトナムIT企業との協業を考えている日本企業への情報提供を目的として実施されたものです。


開場直後のセミナー会場での一コマ。この後、あっという間に席が埋まっていくことになる。日本側出席者の関心は、従来のようなベトナムへのアウトソースのみならず、ベトナム市場への参画を考える企業も同程度あったことに、ベトナム市場への関心の変化を感じる。

 ベトナムからは18企業1大学の計19団体が来日し、日本側とベトナム側の参加企業は合計約100社、130人に上りました。

 冒頭でベトナム側の来賓として挨拶した在日本ベトナム大使館コイ一等書記官とフンVINASA Vietnam-Japan IT cooperation Club会長の言葉からは、今後も日本からの継続的な投資を呼び込みたいとの強い思いが感じられました。コイ一等書記官からは、政府要人レベルでの日越交流が強化されていることの紹介に加え、法制度の整備といったより良い投資環境が整備されつつある現状の紹介がありました。

 またフン会長からは、日本からベトナムへのオフショア市場が成長し日系企業のベトナム進出が増えていることを紹介。2013年の日本からのオフショア業務は2012年比で141%になっているとのことです。私自身のベトナムでの日常業務を通したミクロな視点でも、ベトナムへの日本企業の進出意欲や業務発注を感じており、マクロな視点からも同じ報告があったことは、日系企業のベトナムへの注目度が今後も衰えないといってもいいことなのでしょう。

 また、参加企業のあるベトナム人企業家は、「日本における『チャイナプラスワン』の波の中で、ベトナムが注目されているとはっきりと感じている。そのため、ベトナムではこの波に乗ろうと会社設立が相次いている」という、注目すべき発言がありました。

 文化の親和性などから、ベトナムが日本人にとって事業展開しやすい国であることはこれまでも述べてきましたが、ベトナム人もこれまで以上に、より明確なビジネスパートナーとして日本に注目していることは、日本企業にとってはますます有利なことだと言えるでしょう。

官需頼みの社会システムとしてのITインフラ

 前回の記事で、ベトナムでは社会システムを支えるためのICT関連技術が日本から提供されることを望んでいると紹介しましたが、フン会長からもベトナム国内での大型ITプロジェクト案件例としていくつかの社会システム関連事例の紹介がありました。

 費用規模の大きいものを例としてあげると、「戸籍データベースの構築プロジェクト」は約8000万ドル(約95億円)規模、「eパスポートシステムの構築プロジェクト」は約5000万ドル(約60億円)規模といった具合です。いずれもベトナム中央政府が主導している案件で、民間が主導する大型ITプロジェクト案件の紹介がありませんでした。

 物価の違いがあるために単純な金額ベースの比較はできませんが、日本国内では民間の大型プロジェクトでも数千億円規模のものがあることと比較すると、「大型案件は官需頼み」というベトナムの現状を表しているのかもしれません。

 また、このような官需の大型プロジェクトに参画した日系企業の事例として、NTT DATA VIETNAMの現地代表である村竹氏より、ベトナムにおける入札の特殊性や開発での苦労についての話がありました。

 現在、多くの会社において、オフショア開発に限らず海外と連携した開発が求められていますが、この観点から「日本の開発現場も変革する必要がある」と指摘した点は注目したいと思います。例えば、ベトナムをはじめ海外案件を受注するに際して、日本の開発現場で使用する言語に英語を一部導入する必要があるということです。私自身も経験がありますが、ベトナムのスタッフが日本語ができたほうが日本側は作業が楽になります。

 しかし、案件が進むにつれて日本語とベトナム語の翻訳が作業上でのオーバーヘッドとなってくるため、「日本側スタッフも少しは英語が話せるといいのに」という要求がベトナム側から出てきます。村竹氏の「単体テストレベルでのやり取りくらいは日本側でも英語でできるようになることを期待」という趣旨の発言のとおり、この点については、どの企業の日本人技術者にとっても今後避けることができないことだと思います。

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