ベトナムでビジネスをする

旧正月の「テト」前後は、仕事にならない魔の季節?--ベトナムの事情 - (page 3)

古川浩規(インフォクラスター)

2014-02-20 05:45

日本人にとっては「魔の四半期」

 このように、ベトナム人にとっては待ちに待った休暇。テト商戦のバーゲンで思い思いの商品を買い込み、休みが来るのを指折り数えて待つ楽しい時期ですが、多くの日本企業にとっては、「魔の四半期」と言えるかもしれません。

 まずは、費用の問題。ベトナムではテト前にボーナスを支給するのが一般的です。金額は、以前施行されていた法令で規定されていた「1カ月分」が相場となっており、会社によってはこれ以上支給するところもあります。しかし、現地法人の管理職にしてみると、テト直前の月は人件費が一気に2倍に跳ね上がる時期になるため、資金繰りに苦慮するということも見受けられます。

 次に、最も大きな問題として、仕事がはかどらないということです。日本でも年末年始には、忘年会や新年会が開催されますが、それはベトナムでも同じです。ただ、ベトナムでは人と人とのつながりが、公私両面にわたって大切にされるため、「お付き合い」の回数は必然的に多くなります。また、昼間からアルコールを飲むことに寛容な国でもあるため、テト前ともなると「昼も夜も……」という日が珍しくありません。

 当然、仕事も回らなくなってきます。「テト前に終わらせておこう」と相手の会社に連絡をしても、「上司が不在で対応できません」「担当者がつかまりません」ということが珍しくなく、どうしても仕事は停滞気味となってしまいます。

 日本との仕事の連携を考えると、テトの前後の時期は「魔の『四半期』」となります。つまり、以下のような3カ月になるのです。

  • 12月 日本が年末に向けて忙しくなり慌ただしくなる。ベトナム側からみると、日本側が忙しくて対応が遅れる上に、正月休みで日本側が対応できなくなる。結果として、日越で連携して実施する案件が予定より遅れ気味となる
  • 1月 日本で仕事初めを迎えても、年始も何かと忙しいもの。松も明け本格的な仕事モードになりかけてきたときに、ベトナムはテトに向けての年末モード。結果として、日越で連携して実施する案件が、12月のように予定より遅れ気味となる。しかも、1月下旬頃からは日本では年度末に向けての仕事が何かと立て込んでくるにもかかわらず、ベトナム側では期待できるほどの動きが取れなくなる
  • 2月 日本では年度末に向けてフル回転で業務に取り掛かっているところ。案件によっては「年度末までに何とかメドをつけたい、終わらせたい」ものも多く発生するにも関わらず、ベトナム側ではテト休暇。ベトナム人にとっては「テト休暇に家族との時間を割いて仕事に携わるなんてもってのほか」という意識もあるため、日本のような「長期休暇中の緊急連絡先や緊急体制整備」が敬遠される上に実行力についても疑問

 という3カ月になるためです。そのため、「テトが明けた1~2週間後から、ようやく日本側とベトナム側がしっかりと噛み合って、車の両輪として機能し始める」状態になります。

 とはいえ、文化風習が違うのはお互い様。テト明けにすっきりとした顔で出社して来たベトナム人に「テトはどうだった?」と一声かけるだけでも、コミュニケーションが深まるかもしれません。

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古川 浩規
インフォクラスター
内閣府及び文部科学省で科学技術行政等に従事したのち、平成20年に株式会社インフォクラスター、平成22年にJapan Computer Software Co. Ltd.(ベトナム・ダナン市)を設立。情報セキュリティコンサルテーション、業務系システム構築、オフショア開発を手掛けるほか、日系企業のベトナム進出に際して情報システム構築や情報セキュリティ教育等を行っている。資格等:国立大学法人 電気通信大学 非常勤講師、日本セキュリティ・マネジメント学会 正会員、情報セキュリティアドミニストレータ、財団法人 日本・ベトナム文化交流協会 理事

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