インテルが語った成長戦略--AI、クラウド、5G、IoTの取り組みは

大河原克行

2017-03-03 07:30

 インテルは3月2日、報道関係者向け説明会で同社の成長戦略などについて説明した。江田麻季子社長は「成長とイノベーション促進の原動力データであり、インテルはデータカンパニーを目指す」と述べ、戦略的重点領域に「クラウド、AI、ネットワーク」「メモリ、FPGA、5G」「データリッチなモノと機器」の3点を挙げ、投資を加速していると強調した。


江田麻季子社長

 江田氏は、2020年までに平均的なネットユーザーの利用するデータ量が1日あたり1.5Gバイトになること、自動運転車では1日あたり4Tバイトのデータが利用されると話す。またネット対応航空機では5TB、スマートファクトリーでは1Pバイト、クラウドベースのビデオ配信事業者では750Pバイトが1日あたり生成されるとし、「データの爆発的な増加に伴い、デバイス、データセンター、ネットワークへの投資が必要。半導体の需要拡大にもつながる。膨大なデータが満ちあふれ、IoT化が進展する中でインテルは、データを作るデバイス、データを運ぶネットワーク、データを解析するクラウドやデータセンターなど、全てに関わっていく」とした。

 3つの重点領域のうち「クラウド、AI、ネットワーク」は、「インテルの成長分野であり、最も注力する分野である」(江田氏)とし、特にAIでは2016年11月に、AIが社会や企業の基盤となることを目指し、IoTからソフトウェアにまで広がる広範なポートフォリオを提供していくAI戦略を発表した。

 江田氏は、「高度なアーキテクチャを包括的なエコシステムを通じて提供できるのがインテルのAIの強み。インテルのコアテクノロジを活用したデータセンター向けプロセッサや、特定用途向けプロセッサを継続的に進化させ、大規模モデルにも対応している」と説明する。さらに、「エッジからデータセンターまでの一貫したアーキテクチャを実現すべくNervana SystemsやSaffron Technologyの買収を通じて、AIの普及を加速する」とした。「AIにおけるインテルの強みは、AIのイノベーションサイクルを大幅に短縮するAI関連資産を持つこと、AI活用促進のためのテクノロジー、支援・育成、R&Dに対して、大規模投資を行っていることにある」などと話した。

 「メモリー、FPGA、5G」では、大規模なデータを動かすために最先端のメモリ技術や新世代のコンピューティング環境が必要であるとし、「あらゆるモノ同士、あらゆる人がつながるためには、高速で柔軟な5Gのネットワークが必要。自動運転やIoT、スマートシティの実現など、さまざまな分野で革新的な体験を提供できる」とした。特に5Gは、「インテルの成長戦略の中心になる基盤」(江田氏)と位置付ける。

5Gにフォーカス

 通信デバイス事業本部 グローバルワイヤレス営業本部 日本担当ディレクターの庄納崇氏は、5Gへの取り組みについて説明。「2020年には大量のデータが毎日生成され、数多くのIoTデバイスが接続される。大量データ通信時代は、5Gの次世代ワイヤレスネットワークが必要で、自動運転や医療、ドローンなどリアルタイム性が求められる環境でも重要な役割を果たす」と話した。

 インテルは、開発コードネームで「Goldridge」と呼ぶ世界初のグローバル5Gモデムを開発しており、2017年第2四半期にチップおよびモジュールのサンプルを提供する。「超高速スループットの広帯域動作、低遅延を実現でき、コネクティビティ、クラウド、コンピューティングを理想的に組み合わせることで、インテルは5Gのあらゆる可能性を実現する」(庄納氏)と語った。

 3つの重点領域のうち「データリッチなモノと機器」について庄納氏は、IoTや自動運転、エッジ機器や小売店などでの活用を説明。IoTではモノを接続する「ネット接続」、つないだ機器をコントロールする「スマート化」、その環境である目的に向けて自動的に活用される「自動化」の3段階があり、同社は各段階に向けてIoTとAIを活用したアーキテクチャを開発しているとし、「IoTが広がりサーバ需要が創出される。例えば、40台の自動運転車が売れるとサーバ1台が必要」などとした。

 同氏はまた、業界特化の取り組みについても説明し、小売や交通、産業/エネルギー、ヘルスケアなどの業界で加速させる一方、新たに自動運転ソリューション事業部を立ち上げたと紹介した。

小売の課題をIoTで解決

 IoTへの取り組みは、IoTアジア・セールスIoTマーケット・デベロップメント ダイレクターの佐藤有紀子氏が説明。「モノ、ネットワーク、クラウドといったIoTに関する一貫したプラットフォームを提供できる。IoT領域で再利用と水平展開できるスケーラブルなビルディングブロック、産業分野ごとの要求に対応した垂直型ソリューション、パートナーシップやアライアンスなどによるエコシステムがインテルの特徴」とした。

 同社は、小売業向けに「インテル レシポンシブ・リテール・プラットフォーム(インテルRRP)」をいうIoT活用を提案する。佐藤氏によれば、在庫管理や販売促進、デジタルサイネージ、地域別/個人別対応といった店舗でのさまざまなユースケースに対応し、小売店の課題を解決できるとする。

 「2020年時点でも、実店舗が販売比率の7割を占める。消費者は店舗に多くのことを望み、店舗側はよりスマート化しなければならない。顧客との関係性や人的資本の管理、在庫精度が小売業者の大きな課題であり、適切に管理されていないとされる1兆ドル規模もの在庫の管理精度を高めるだけで、売り上げを高められる」(佐藤氏)

 また具体的なソリューションとして、「RFID在庫管理ソリューション」をシステムインテグレーターやサービスプロバイダー経由で提供している。2017年中には、新たなユースケース向け小売ソリューションを提供する予定だとし、「BluetoothやWi-Fiに接続したカメラやセンサなどから得られる情報を有効活用すべく、店舗でのエッジコンピューティングを提案していく」という。

 小売店舗のIoT活用事例では、島精機製作所との協業を挙げ、USBメモリに格納されたデータを活用することで、ニットの洋服を店舗でオンデマンドに生産する様子を紹介した。

データカンパニーを目指す

 各氏の説明を踏まえて江田氏は、自動運転がこれらの重点領域で横断的して関わると指摘。「自動運転車は、車輪付きのデータセンターとも言われる。自動運転を制御する車載コンピューティング、優れたインターフェース、常時接続における通信環境などが求められる」と話す。

 インテルは、1月に自動運転向けの開発プラットフォーム「インテルGo」を発表、業界初の5G対応開発プラットフォームとして、自動車メーカーとの協業により5Gを実用化し、自動運転車の開発に貢献できるとする。「自動車とクラウドが連携し、開発スピードの高速化やコスト削減に貢献するだけでなく、開発に大きな柔軟性をもたらす。市場に新たなユーザー体験をもたらす自動運転の進化をさらに加速できる」(江田氏)とした。

 最後に、「事業領域での専門性と、適切な市場に対する適切なアプローチ、パートナーシップやM&Aの推進により、エンド・トゥ・エンドのソリューションを提供できる。半導体とソフトウェアでリーダーシップを発揮する。データはテクノロジーを進歩させる根底であり、インテルはデータカンパニーを目指す」と表明した。

下記は説明会資料のスライド

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