ベンダーやアナリスト、業界ウォッチャーの発言に「デジタル変革」という流行語が登場する頻度は、近年ますます増えている。ある意味では、企業のデジタル変革はメインフレームやミニコンピュータの時代から始まっており、PCとクライアントサーバ、インターネットとウェブ、そしてモバイルとクラウドへと、時代を移しつつ数十年にわたって進展し続けている。しかし今後数年の間に、アンビエントコンピューティングとAIを用いたコンピューティングの新たな世界が到来し、過去最大級の変化が訪れることはほぼ間違いない。
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デジタル変革の定義
しかし、「デジタル変革」とは一体何だろうか。まずは、さまざまな企業によるデジタル変革の定義と説明を紹介しよう。
「企業はまず、デジタル化について総合的な検討を始め、あらゆる活動にデジタル思考を適用することで、自らを変革する必要がある。これには、どのように顧客を獲得し、サービスを提供し、維持するか、社内のプロセスをどう運用するか、そしてビジネスサービスをどう提供するかが含まれる。端的に言えば、企業はデジタル企業にならねばならない」(Forrester)
「(デジタル変革とは)新たな技術、ビジネスモデル、プロセスに対する投資を再編成して、顧客と従業員に対する価値を高め、変化を続けるデジタル経済の中で効果的に競争できるようにすることだ」(Altimeter)
「(デジタル変革とは)周到に策定されたビジネス戦略と整合する、その戦略によって推進されるITイノベーションの成果であり、その目標は企業が顧客、従業員、パートナーに価値を提供する方法を変革し、事業運営の継続的な改善を支え、既存の企業や市場に破壊的改革をもたらし、新たな企業やビジネスモデルを生み出すことだ」(451 Rearch)
「デジタル変革の目標は、よりよいソーシャル機能でも、高速なアナリティクスでもない。それは、企業の適応力と学習能力をさらに高め、何よりも顧客体験を構成する製品、販売、マーケティング、サービスを1つに結びつけられるようにすることだ」(Adobe)
その範囲は非常に広く、最高情報責任者(CIO)1人の視界をはるかに超えて広がっている。例えば多くの企業では、デジタル変革が顧客と向き合う現場から始まり、顧客体験(CX)の見直しを経て、組織の内側に向かって進行している。デジタル変革について論じる記事で、最高マーケティング責任者(CMO)への言及が多いのはこれが理由だ。しかし、アナリストの発言や調査によれば、デジタル化が進んだ企業は、総合的な戦略を持っている傾向が強く、経営幹部全員からの支持を受けて、最高経営責任者(CEO)によるトップダウンで物事を進めている。
まず、デジタル変革の成功に何が懸かっているのかを意識することが重要だ。最近実施された、従業員500人以上の欧米企業の幹部を対象とする調査(ChristianSteven Softwareの依頼によりGITNSが実施)では、回答者の約3分の2(65%)が、Fortune 500企業のうち40%が10年後にはなくなると考えている。また回答者の半数以上(53%)が、従来の常識を覆すような革新的企業との競争について心配している一方で、ほぼ全員(91%)が自社のテクノロジの未来に希望を持っている。