オンデマンドITの普及はすでに臨界点を超えており、あらゆる規模と分野の組織が、クラウドコンピューティングサービスを事業の運営や発展に活用している。
しかし、今後クラウドはどこへ向かうのだろうか。また、クラウドの次の段階を占う興味深い事例には、どんなものがあるのだろうか。
この記事では、ビジネス分野やテクノロジ分野の4人のリーダーに、それぞれの組織にとってクラウドが何を意味するかを語ってもらった。
1.レガシーを克服して社内データセンター脱却へ
ID管理サービス企業Oktaの最高情報責任者(CIO)Mark Settle氏によれば、同社では140種類のクラウドアプリケーションを利用しているという。「わが社はデータセンターの心配をする必要がない。これによって、予算策定はずっと簡単になる。基本的に、SaaSの利用料金とプロジェクトのリストを調べて、将来のコストがどうなるかを見積もればいいだけだ。作業はほんの90分で終わる」と同氏は言う。
Settle氏は、この設備投資費から経常運用費への移行が、IT部門の責任者が受けるもっとも重大な影響だと考えている。同氏は、7社でのCIOの経験を含むこれまでのキャリアを振り返って、「これこそ未来であり、これまで経験してきたアプローチと一番違うところだ」と述べている。
Settle氏の考えでは、クラウドは今や普通のビジネス活動になった。「ほとんどすべての企業経営者は、クラウドファーストの考え方になっている。ソフトウェアを開発したり、それらのアプリケーションをデータセンターで動かすために新しいサーバを買おうとする経営者はほとんどいない」と同氏は言う。しかし同氏は、依然として重大な課題は残っており、特にレガシーアプリケーションの問題が大きいと認めている。
「インフラの面で言えば、以前はテストと開発のために使われるものだったクラウドは、今や本番サービスを提供するプラットフォームになった。自信を持ってシステムをクラウドに移行する人が増えており、これまで社内データセンターに置かれていたものが、次々にクラウドに移されている」とSettle氏は言う。
「しかし、大規模なグローバル企業が、完全に自社のデータセンターをなくせると考えるのは誤りだ。今後も社内でのメンテナンスが必要なレガシーアプリケーションは残っていくだろう。その理由は、費用的なものであったり、現在動作しているシステムを混乱させたくないというものであったりする。希望があるとすれば、コンテナ化に関する最新技術が、一部の懐疑派が持つレガシーに関する懸念を払拭する役に立つかもしれないということだ」(Settle氏)
クラウドはすでに教育の分野で大きな役割を果たしており、その役割は今後大きくなるばかりだ。
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