「クラウドやIoTで社会問題を解決する」――。2004年設立のIT企業、ユニファイド・サービスが掲げる理念だ。セールスフォース・ドットコムの前社長で、ユニファイド・サービスの代表取締役会長を務める宇陀栄次氏は同社のスタンスについて「今までのITサービスの売り方とは違う。世の中がこんなに良い社会になったらいいよね、というモデルを作っている。いい仕事をやっていれば自ずと利益もついてくる」と説明する。
ユニファイド・サービス 代表取締役会長 宇陀栄次氏
取り組んでいる事業の1つは業界特化型のSaaSで、個々の業界に合った新しいビジネスモデルをクラウドで実現する。第一弾は電力小売り事業を支援するシステムだ。太陽光発電事業者向けにも、IoTデータを収集・分析するクラウドサービスを用意する。医療分野にも進出しており、在宅看護を支援するクラウドサービスに力を入れている。
宇陀氏自身は、ユニファイド・サービスの活動とは別に、2020年の東京オリンピックとパラリンピックにも、組織委員会のチーフ・テクノロジー・イノベーション・オフィサーとして関わっている。オリンピックとパラリンピックを通じて「おいしい食など、日本の良いところを世界に売り込みたい」(宇陀氏)としている。
ソーシャルの進化によって社会のコミュニケーション基盤が整った
ユニファイド・サービスは元々、クラウドとユーザーインタフェース(UI)を統合(ユニファイド)することを狙って設立した会社だ。「B2B(法人向けサービス)においてもUIは重要であり、いずれはクラウドとUIを組み合わせて使う時代が来る」(宇陀氏)との予想に立って、ユニファイド・サービスを立ち上げた。
最初に手がけた事業は、法人向けのポータルをクラウド型で提供するサービスだ。ポータルを通じて情報システムにアクセスするEIP(Enterprise Information Portal)の発展形として、チャット機能などのソーシャル機能に注力したソーシャルコミュニティポータルと呼ぶコンセプトを立案した。
ポータルソフトとしては、Liferayと呼ぶオープンソース(OSS)のウェブポータル構築ソフトを担いでいる。ポートレット(画面部品)の1つとして、セールスフォースのCRM(顧客関係管理)ソフトと社内情報システムを1つの画面に統合するコンポーネントなども提供している。
「ソーシャル技術は重要だ。ソーシャル技術の発展によって世の中のコミュニケーション基盤が形成され、社会的問題を解決する準備が整った」と宇陀氏はソーシャル技術を評価する。「Windows 95以降の20年間は、エンタープライズ技術よりもソーシャル技術が著しく進化した。人もモノも金も、すべてソーシャル技術に投入された」(宇陀氏)
電力自由化を皮切りに業界特化型SaaSでビジネスモデルを支援
注力事業の1つが、インダストリアルSaaSと呼ぶ、業界特化型のクラウドサービスだ。「本来は個々の業界にいる人がやるのが望ましいが、やらないならわれわれがやる」(宇陀氏)。
第一弾は、2016年4月に完全自由化された電力小売り事業を支援するサービスだ。2016年3月にリリースし、3社が同時に利用を開始した。ユーザーに「みんな電力」や「ミツワ産業」などがある。
機能として、顧客情報管理をベースに、契約先の切り替え処理や、電力メニューに従った料金計算と請求処理、などを提供する。
電力小売り業向けに加え、電力の生産者である発電事業者向けのサービスも手がける。太陽光発電の正確な情報を収集して分析するIoTクラウドサービスであり、電力の安定供給を目指す。電力の生産と販売をマッチングさせることによって「地産地消」を狙う。