米IBMは3月19日より米ラスベガスで年次イベント「IBM InterConnect 2017」を開催している。初日の基調講演が開かれた20日、IBMでクラウドや分析を率いる幹部が登場し、「IBM Cloud」の最新機能や提携を発表した。パブリッククラウドでは後発となる同社だが、Watsonの統合、シングルアーキテクチャなどより差別化を図る。
InterConnectはクラウド、コグニティブを中心としたイベント。これまで「Impact」「Innovate」「Pulse」などソフトウェア製品ブランド別に開催していたイベントを統合した位置づけとなる。2万人以上が参加し、2000以上のセッションが用意されている。
David Kenny氏。The Weather Company買収によりIBMに入社した。
2017年初め、IBMはクラウドとコグニティブへのフォーカスをにらんで組織再編してきており、シニアバイスプレジデントとしてクラウドを率いてきたRober LeBlanc氏は引退、アナリティクスを担当してきたBob Picciano氏はCognitive Systems部門に移った。
今年のInterConnectの基調講演の中心は、IBM Watson&Cloud Platform担当シニアバイスプレジデントに昇格したDavid Kenny氏、そしてIBM Researchのディレクター兼Hybrid Cloud担当シニアバイスプレジデントのArvind Krishna氏だ。
オブジェクトストレージはAWSとAzureに価格で勝負
基調講演での製品発表の目玉は、Kenny氏が発表したオブジェクトストレージ「IBM Cloud Object Storage Flex」だろう。従量課金により、アクセス頻度の高い「ホット」、あまりアクセスされない「クール」、アーカイブ用の「コールド」の3種類を動的に管理できる。
「無制限にデータを保存しつつ、リアルタイムで迅速にアクセスしたいというニーズに応じる」とKelly氏。2020年には44ゼタバイトのコンテンツがあり、そのうちの8割が非構造データだというIDCの予想を紹介し、(IBM Cloud Object Storage Flexは)「データの利用パターンを予測できない場合に最適」と売り込んだ。Amazon Web Services、Microsoft Azureは既に提供済みだが、価格は大きな差別化のようだ。「(Microsoftの本社がある)レドモンドより75%低価格」とKelly氏、Azure GRS Cool Tierと比較してのものだ。
Arvind Krishna氏。
IBMのプレスリリースによると、AWS S3 IAと比較すると53%価格を抑えたとしている。
Krishna氏は、DevOpsツールへのWatsonの統合について紹介した。「IBM Cloud Automation Manager」「IBM Cloud Product Insights」「IBM Digital Business Assistant」なども紹介された。IBM Cloud Automation Managerは会期中に発表された新機能で、複数のクラウド(マルチクラウド)でクラウドインフラを実装できる。
全体のワークロードを可視化して管理を簡素化でき、さらにWatsonを利用することで環境を分析し、どこにワークロードを実装すべきかのレコメンドももらえると言う。IBM Cloud Product InsightsはIBM Softwareがどのように使われているのかを把握できるもので、推測に基づく作業がなくなり、ツールとサービスを効率よく利用できる。
「IBM Cloud Product Insights」
IBM Digital Business Assistantも会期中に発表されたもので、既存のデータソースを統合できるパーソナルアシスタント。最小のコードまたはコードを書くことなしに、事前構築された機能を利用できる。Watsonやアナリティクスにより、重要なイベントを検出して通知したり、最善のアクションを提案し、モバイルデバイスに直接実装するなどのことができるという。
「IBM Digital Business Assistant」コードをほとんど書くことなくアシスタント機能を構築できる。
Krishna氏はまた、Kubernetesをサポートする「Bluemix Container Service」も発表した。KubernetesはGoogleが開発したオープンソースのコンテナオーケストレーションで、これを利用してコグニティブアプリを迅速に開発できるとする。デモではKubernetesクラスタを作ってアプリケーションを数クリックでBluemix Containerに実装して見せた。